電力一般

カーボンニュートラルについて

日本における再生エネルギー

2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、菅義偉総理大臣が「2050年カーボンニュートラル」に言及したのは記憶に新しいかと思います。加えて、日本でもEVの普及が加速するともいわれていますが、そもそもカーボンニュートラルとはなんなのでしょうか。一般には、地球上の炭素(カーボン)の総量に変動をきたさない、CO2の排出と吸収がプラスマイナスゼロになるようなエネルギー利用のあり方やシステムの社会実装を指す概念になります。特に化石燃料を使うとCO2が排出するわけで、特に車及び発電所がやり玉に挙げられます。いきなり政府からこうした発言があり、トヨタ社長が怒りの記者会見をやったのは最近のことです。この怒りに関して、自動車産業という観点から次の動画が詳しく書いていますので参考ください。

EV化に必要な発電量

現状の電源構成

上記の動画で述べているように、日本の産業としてもすべての車をEV化するというのは問題であるのですが、発電という観点からも問題があります。EVにするということはガソリンに代わるエネルギーとして電気を使うわけで、その電気を化石燃料から持ってくるとなると、1次エネルギーであるガソリンで車を走らせるよりも、よりCO2を発生させてしまいます。日本の電源構成としては、下記の図にあるように、現状は優に火力がほとんどを占めており、通常通り原子力発電が動いたとしても、50%を占めています。これをクリーンエナジーに変えつつ、追加で必要なエネルギーもクリーンエナジーで置き換える必要があります。

図1 発電電源構成(出所)経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2019

全てEV化するのに必要な電力量

ガソリン1リットルは33.37メガジュールになっております(参考)。1㎾h は 1000×60分×60秒=3.6×10⁶ジュール、つまり3.6メガジュールのことなのでガソリン1リットルは 33.37÷3.6=9.26 [kWh] (同様の計算で軽油ですと10.56[kWh])ということになります。この種の数字は資料によってある程度の誤差があります。単にガソリンとか灯油とかいっても規格内でのバラツキがあるからです。
政府が発表しているデータによりますと、2019年はガソリン49,499,000,000リットル、軽油25,448,000,000リットルの消費となっておりますので、
49499*106*9.26=4.583*10^11
25448*106*10.56=2.687*10^11
で合計として、7.27*10^11[kWh]、ただし、燃焼効率が40%程度ですので、
7.28*0.4*10^11=2,910億kWh
の発電量が必要となります。凡そ近年では1兆1000億kWh程度の発電量が日本ではありますので、凡そ2割から3割程度の追加発電量が必要という結果となります。

期待される洋上風力でできる電力量

次に、日本で期待されている再生エネルギーとして、洋上風力が挙げられますが、開発可能であろうとされている発電量は45GW=45,000MWとされています。別のところでも述べますが、日本は島国故に風力のポテンシャルはありますが、海岸から遠くなれば、風車の基礎の問題、送電線の問題がでてくるため、どこでも作れるというわけではありません。そのため、凡そ開発可能な洋上風力は、45GWといわれています。では、どの程度の発電量かといいますと、商業可能な風力発電所の設備利用率は30%程度とされていますので、
4500万*0.3*8760=11,826,000=1,182億kW
となり、全体の1割程度、火力の代替どころか、EVの追加分も対応できません。

日本はどのようにカーボンニュートラルにするのか

以上のように、風力をはじめとする再生エネルギーだけでは、カーボンニュートラルは難しく、原子力もしくは、他のエネルギーが必要となります。一つには、水素ガスが挙げられておりますが、これは、再生エネルギーで電気分解で行うか、石炭から作るかになります。前者は、よっぽど再生エネルギーもしくは原子力の電源が余っているところでしか、CO2を発生させずには水素ガスは作れません。一方、後者の場合は、石炭をたくさん持っている中国やオーストラリアで作ってもらうということになります。日本単体で見ればCO2を発生しませんが、世界的には、どこかでCO2を発生させることになります。しかも、水素ガスには特別な設備が必要で、追加投資が必要です。
このように、エネルギーセキュリティーの観点や、電源構成の観点から、カーボンニュートラルという戦略を立てないと、産業を弱め、消費者に負担をかけてしまうということをしっかり考えていく必要があると思います。
これらの話題については、別途、記載したいと思います。

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Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など