リスク管理

成功よりも失敗が大事?

  • 成功体験を書かれた本や意見は、新規プロジェクトに適用しても成功する可能性は低い
  • 同じことを繰り返さないようにするために失敗事例は重要
  • 失敗をリスク低減に役立てるモデル(ALARP、ハインリッヒの法則、チーズモデル)

成功に関する本の氾濫

自己啓発というと、成功者が自分の経験を書いた本を、皆様も読まれたこともあろうかと思います。しかしその多くの内容は、時代背景であったり、その人の運であったり、著者以外の人に対して、それが適用できるものはほとんどないかと思います。至近では、カルロス・ゴーンが日産をV字回復させたときには、いろいろな本も出ましたが、現在はバーレーンに逃亡中と、あの時の本は何だったんだろうという感じです。また、ジェームズ・コリンズのヴィジョナルカンパニーなんかも、そこで出てくる会社の多くが倒産や凋落しています。

私が携わっている電源開発においても、成功例では結果しかわからず、本当はどこかで非常に苦労して、乗り越えてきたはずなのに、なかなかそのポイントがわかりにくいことも多く、失敗談や苦労話のほうが、次のプロジェクトにつながることが多いです。特に再エネ開発では、1つとして同じプロジェクトはなく、プロジェクトの成功例をあとで見ても、次につながりにくい傾向があります。

失敗の重要性

先にもあげましたが、成功の経験談よりも、失敗談のほうが汎用性が高く、むしろそうした失敗経験の蓄積や分析、また疑似体験としての読書のほうが重要だと思います。パナソニックの創業者である松下幸之助さんも、「私は失敗をしない若い人っていうのは、あまり信用しない。何もしてないことを証明するようなものじゃないか。」とおっしゃっているように、失敗が次の糧であることを述べていらっしゃいます。以下に失敗を考察する際に参考となる理論を挙げたいと思います。

ALARP

全てのリスクに対応することは不可能なので、どこまで許容することができるかが重要となる。As Low As Reasonably Practicable, ALARP, 合理的に実行可能な範囲でリスクを低減する原則が提唱されている。その考え方を図1に示すが、規制値1と目標値2の間の領域が我慢できる領域であり、この領域のリスク低減に要するリスクと効果のバランスを考えることが重要となる。日本の場合、この1と2が限りなく近く、原子力発電所事故で生じた安全神話につながったといえると思います。

例えばダム設計において、洪水時に対して、1を10,000年確率洪水(もしくはProbable Maximum Flood)で限界状態にて構造体としてもつ設計、2では通常の運用できる状態で、1と2の間は一定の被害を許容するといった形で設計をします。

このように0か1かといったものではなく、一定のリスクを受け入れると考えることで、より合理的なものにするという考え方です。そして問題が生じた場合に、その状況に応じて、検証、1や2の基準を見直していくというものです。つまりリスクの定め方が本当によかったのか、と失敗から学んでいきます。

図1 ALARPの概念図

ハインリッヒの法則

ハイリッヒの法則は安全管理でよく使われる理論です。つまり、
・安全担当者は、重大な事故が小さな事故の副産物として起きていると信じ、小さな事故の頻度を現象させることに取り組む。
・データを見ると、災害頻度を増す原因と強度を増す原因とは異なったものであり、重症の発生を抑制するには、それが発生するところの予見が重要
というもので、設計段階から安全確保、またプロジェクトの失敗要因予防が重要となります。ここにも、失敗経験が大きく生かされます。

図2 ハイリッヒの法則

スイスチーズモデル

スイスチーズをモチーフとしたリスク管理の考え方で、図3に示すようにチーズを薄切りにしたものを何枚も重ねた状態をイメージしています。1つの考え方に基づいた管理では、不祥事や事故が起こる可能性が高いため、様々な観点の防護壁を設けるというものです。

よくあるのが、事業性を追求するために、起こる不祥事であり、こうした事象は結局、自社に大きな損害を与えてしまいます。そういった意味で、この障壁をどういった観点でつくるべきかを、失敗事例を参考にしていくことは有効だと思います。

図3 チーズモデル

最後に

私もプロジェクトを進める中で、結構いろいろと失敗もしてきました。若いころの失敗は、失敗したときは、この世の終わりかといった感じに思いますが、結構そんなことはなく、年を取ってからのほうが致命的です。なので、若いころには失敗を恐れず、仕事に取り組むことは重要だと思います。ただ、そんなにいっぱい失敗はできないので、疑似体験という意味では、失敗を語っている良本を読んで、疑似体験することは非常に良いと思います。一般書では、王道として、以下の本が非常に参考になります。

失敗の本質

戸部 良一 (著), 寺本 義也 (著), 鎌田 伸一 (著), 杉之尾 孝生 (著), 村井 友秀 (著), & 1 その他

第2次世界大戦での日本の軍隊の話ですが、軍隊=企業とみると、いろいろと参考になります。特に「空気で決まった」という場面が多く、企業の不祥事もこれに類することが原因で起こることが多いように思います。

別の機会で、失敗談とその対応方法に関することを記載していきたいと思っています。

ABOUT ME
Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など