記事:2021/3/11 OAN (Source : Reuters) “Make-or-break EDF restructuring talks seen concluding in March
記事によると、フランス政府と欧州委員会による EDF の構造改革に関する話し合いは、最終段階にはいっており、3月末には結果がでるだろうと、労働組合や関係者の話で分かった。
労働組合からの情報によれば、結果は確実ではないとしながらも、ここ数週間に及ぶ協議の結果、協議は合意にいたると楽観視できる根拠があるという。
それを受けて、2021/3/10には、 EDF の株価は6%上昇した。
フランス政府と欧州委員会は、 EDF の構造改革と原子力の扱いについて数か月話し合われてきた。ヘラルド計画と評されており、負債の大きい EDF がそのコストを賄えるようにするものである。
両者は、原子力部門とその他の部門を分離する必要性の範囲において、対立しており、全ての部門が政府の補助金から利益を得ることを避けるためである。
特に、原子力発電の売電価格に関する制度について、最終段階に入っていると、関係者は語っている。
EDF 及びフランス政府は、この点に関してコメントを拒否している。
フランス政府は、合意に近づいていないと示唆しており、 EDF のレビCEOは新聞社とのインタビューにおいて欧州委員会は完全分割を求めているが、フランス政府は拒否していると述べた。
EDF の労働組合は、中間形態である企業内分社を含めてグループ改革に強く反対しており、改革を実施すれば、最終的には完全分割されるものと懸念している。
至近に両者が合意に至らない場合、大統領選挙が行われる2022年までにフランス議会で計画案が可決するのが難しくなるとしている。
考察
EDF とフランス政府は、欧州委員会からの解体の要請、また労働組合からの構造改革への反対など、板挟みな状態が続いてきたが、ようやく結論がでそうな状況になってきているようです。
今回の改革案はHercules計画と呼んでおり、①ARENH制度改革と② EDF の構造改革の2つからなっています。
ARENH制度改革に関しては、 EDF が原子力発電のコストをカバーできるよう、 EDF に対し今後数年間、原子力発電量に対する一定の報酬を保証するというシステムが有力となっています。その価格は、1MWhあたり45-50ユーロと、現在の42ユーロよりも高く設定される見込みです。ただし、 EDF のレビCEOが推している「報酬に上限および下限を設定する(保証価格と卸売価格の比較が行われ、 EDF が下限価格よりも低い価格で原子力発電由来電力を販売することになった場合には、競合事業者は EDF に下限価格との差額を追加で支払い、逆に EDF が卸売価格に比べて割高な価格で販売することになった場合には、 EDF が競合事業者に上限を超過した差額分を返済する)」というシステムに比べて、 EDF には不利になるといっております。
一方 EDF の再編に関しては、子会社に対する経営権・影響力をもたないホールディング会社を設置した上で、その下に、原子力発電、送電(RTE)を束ねた「 EDF ブルー」、水力発電の「 EDF アジュール」、法人・個人向け電力小売、配電(エネディス)、再生可能エネルギー( EDF ルヌブラーブル)を束ねた「 EDF グリーン」を配置することが計画されています。
以上のように、原子力をてこに、再エネへの投資をもくろむ EDF に対して、各国がその競争力を懸念しての抵抗と考えられます。欧州では、大手電力会社が国の事業を踏まえながら変遷してきており、各国が国益のために、相互にけん制しながら、欧州全体の制度作りが行われています。特にドイツは、自由化・反原発の急先鋒ですが、その理由は、自国の電力会社の方向性にあります。ドイツは、自国は再エネで構成させる一方で、融通により電気を安定させるという方向性であり、また1次エネルギーはロシアを含む天然ガスにより補うものです。こうした他国の戦略をしっかり理解したうえで、自国のエネルギー戦略を立案していくことが重要です。