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米 ケリー 気候問題担当大統領特別特使、EU による 炭素国境税 ( 炭素国境調整措置 )計画に懸念を表明

記事:3/12 Financial Times, “John Kerry warns EU against carbon border tax”

記事によると、 ケリー 環境特使は、今年11月に行われる予定の 国連気候会談 に先駆け太平洋横断気候アライアンスを設立することに向け、4日間におよぶ EU 訪問を行った。その最後の日に、 ケリー 氏は EU に対して、 炭素国境税 は最終手段であるべきだと警告した。 ケリー 氏は、FTのインタビューにおいて、 炭素国境税 に関する計画を 欧州委員会 が進めることについて懸念を示し、 EU に対して、Glasgrowで行われるCOP26気候会議が終わるまで待つように促した。 炭素国境税 は経済、また関係性、特に貿易に対して重大な影響を与えるため、 炭素国境税 は最後の手段であるべきと述べた。 欧州委員会 は、 炭素国境税 は気候に関する協定に参加しない国々からの輸入に対するものであるとし、最初の標的は鉄鋼やセメント産業で、 炭素国境税税 の仕組みは、 EU のグリーン政策を推し進める戦略の中核をなすと述べている。

EU はアメリカに対して、 カーボンプライシング や税制のような分野における欧州の方針に従うように促しているが、 ケリー 氏は、そうした分野に対して、アメリカは独自路線を進むことを示唆した。バイデンアメリカ政権と EU は、COP26に先駆けて戦略を構築しており、世界最大の排出国である中国に対して、排出を早期に削減するように求めるよう協力している。しかし、両者は税制に関して対立が生じている。フランスの財務大臣であるブルーノは ケリー 氏に対して、アメリカと欧州で2種類の税制があるのは問題であるとして、欧州に従うべきと示唆したが、 ケリー 氏は受け入れなかった。 ケリー 氏は、財務長官であるイエレン氏、SEC議長Gary Gensler氏や他の関係者は、財務情報の公開や税制、グリーン債券、その他に関してどのように進めていくのか、いろいろな意見を持っているはずと述べた。

考察

炭素国境税 はグリーンディールの一環です。EUにおける工業部門の排出量のうち94%を占める部門(電力、セメント、鉄鋼など)に関して、気候関連規制が緩い諸国からの輸入に対して課税を行うという内容になっています。欧州委員会 は2021年6月に具体的な提案を明らかにする予定としています。欧州議会 は3月9日、同措置の導入を呼びかける決議案を採択していますが、炭素国境税 の導入と並行して、欧州連合域内排出量取引制度(ETS)において、セメント、鉄鋼、石化といった鉱工業部門企業に一定の排出権を無料付与する制度を段階的に廃止する提案も行われています。欧州議会 はこの提案については、早期の廃止に反対する決議を採択しています。無料付与制度の維持を求める票が334票、廃止を求める票が329票、棄権が23票と、意見の対立が目立っています。なお、鉱工業業界団体や経営者団体は、競争力維持の観点から、 炭素国境税 を導入しつつ、ETSにおける排出権無料付与制度は維持すべきだと主張しています。

このように 炭素国境税 は、単純に追加関税であり、欧州の一部の国にとって有利なものであることは明らかです。日本もアメリカととも共闘していかなければ、多くの産業が、ヨーロッパに工場を移動させざる負えない状況になりえます。 カーボンニュートラル に関する危機感は、トヨタ社長の豊田氏も述べており、国策としてどのように産業を守っていくかは非常に重要な要素となります。

また カーボンプライシング に関する議論が日本でも始まっています。各国の動きをまとめた環境省の「炭素税・国境調整措置を巡る最近の動向」は参考になるかと思います。その他、2020月10月以降、様々な本も出ているので、そうしたものを参考に記事を見ていくと、全体がつながって見えるようになると思います。

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Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など