2021年テキサス停電

テキサス大停電 に対する政府対応、新たな総合的法案を提出

記事:CBS Austin, 2021/3/30, “Texas Senate passes weatherization and power outage alert bill”

記事によると、先月、冬の極度の寒さにより、電源の半分近くが使えなくなり、数百万の市民に影響がでた停電に対して、テキサス州上院が新たな法案を通過させ、テキサス大停電 を切欠とした冬季対策に向けた新たな一歩を踏み出した。

テキサス停電は何が原因なのか?再エネ導入?インフラ設備不良?2021年2月15日にテキサスで起こった停電に関する記事をまとめ、考察を行っています。加えて、ERCOTの見解も記載。今後の日本電力市場設計にも影響を与える事件です。...

上院では、州法案3が2021年3月29日に31対0の前回一致で通過した。同法案では、発電所、送電線、天然ガス設備の全てにおいて、冬季対策を求めるもので、違反者には一日あたり最大1Millionの違反金が課せらる。 テキサス大停電 時において問題があった設備は、第三者による設備及び手続に関する審査が行われる。

上院議員であるCharles Schwertner氏は、その法案の作成にあたった。彼の選挙区、一部Austinを含むが、 テキサス大停電 時において最も被害にあった地区であった。そのため同議員は、これまでElectricity Reliability Council of Texas (“ERCOT”)を批判してきた。また、「市民は自宅において、暖もとれずに数時間から数日間耐えることになったのであるが、こうした事象に対して責任を有する産業や規制側が間違っていたことは明らかだ。この失敗は、私を含めて、ここにいる全ての人が受け入れなくてはならない」と語った。

近年テキサスでは、発電所に対して冬季対策を強要してこなかった。代わりに、Pubilic Utility Commission of Texas (“PUC”)やERCOTは、対策を推奨するだけで、自分達が示した計画に対して事業者が従っているかを確認はするものの、仮に従っていなかったとしても何の懲罰も与えてこなかった。

テキサス大停電 において、状況が最もひどかった際、テキサス州の半分程度の発電所が停止した状態になった。更迭されたERCOTの元CEOであるBill Magness氏によると、発電網はあと5分遅ければ、数週間から数カ月続くような停電になりえたと述べていた。

先月のERCOTに対する委員会での聞き取り調査において、数名の議員達が、冬季対策を求めることを表明していた。加えて、この法案は、緊急警告システムの構築も求めており、テキサス州において電源停止警告を発するものとなっている。

州法案3は、輪番停電の手続きについて、顧客に情報提供することを義務つけている。また同法案はERCOTに対して、天然ガスの供給が限られている場合、家、学校、教会など、天然ガスが必要なところに対する情報伝達や手続きを改善することも求めている。

Bill Magness氏は、「州法3は、バレンタインデーに発生した主要な事故に関して、根本的な原因を包括的に記載している。つまりその原因とは、俯瞰的でない視座、情報伝達の脆弱さ、協力の欠如である。同法案は、緊急事態に対して、州レベルで回避、また準備を強化する改善方法を提案しており、二度と同じことが行ないようにするものである。」と述べた。

同法案の修正として、ERCOTによる1兆6000億円の追加請求について述べられている。修正案では、今回のように人為的に価格が引き上げられることがないよう、優遇措置を求めるもので、将来、同じような事象がおこらないように考えられたものである。

ただし修正案では、直接的に1兆6000億円について述べられたものではない。本件に関しては、今月のはじめから数週間にわたって様々なところで話題となっており、アボット州知事とパトリック副知事との間で珍しく争いが生じていた。

アメリカ テキサス 2021年冬の 電力高騰 に関する州政府の対応アメリカ テキサス 2021年冬の 電力高騰 に関する州政府の対応として、 テキサス 上院が電力総額160億ドルのうち、51億ドルを遡及的に価格修正をするという州法案を提出。しかし、下院において、審議がなされない見通しになったという記事。...

同法案は、緊急事態において生じた費用の徴収を遅らせるとともに、支払いスケジュールを顧客と作るように、ユーティリティー企業に求めている。

この法案の議論及び通過のタイミングが重要になっている。というのも、テキサスの下院において、電力網に関する6法案を議論する予定があり、その法案の一つは、冬季対策を求めるもの、別の法案は停電時の通報システムが必要かどうかを検討するというものだからだ。議論を行う一日前に州法3案が下院に提出される予定になっている。

ちょうど今、州法3案がテキサスの下院に提出された。下院の委員会と議会において、同法が通過すると、知事に提出されることになる。

考察

テキサス大停電 に伴う議論は、日本においても注目されています。というのも、日本においても、価格の高騰に対して遡及的に救済すべきではないかとの議論もあり、テキサスでも同様の法案が上がっていたからです。しかしながら、結果的には、下院では議論されず、破棄されました。それを補うべく今回の包括的な法案が提出されたものです。

こうした議論の他に、有名な投資家であるウォーレンバフェット氏が運用するBerkshire Hathawayが戦略的予備力による冬季対策も提案されておりました。反対意見もあったようであり、結果的には、この案は破棄され、上記の法案により対応するとの方向に向かっているようにも思います。

しかし本法案は、コストの負担をどうするのかといった議論がないため、廃業等が生じた場合、2021年の冬よりも電源が足りないという事態にもなるかもしれません。つまり、この法案により古い電源の選別が起こり、電源が根本的に足りなくなる事態です。その場合、足りない電源をバフェット氏が提案するような形で導入されることも考えられると思います。

まだ最終案ではないため、今後の動きを見守りたいと思います。また電力システムについて興味があるかたは、下記の図書を読んでいただけると今回の問題点をより理解いただけるように思います。

ABOUT ME
Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など