電力関連記事

2021年9月における中国の 大規模停電 に関連する話題

中国の 大規模停電 の背景

中国では2021年9月中旬以降、 大規模停電 が頻発しており、加えて大規模産業用重要家への電力使用制限など、広東省を含む10以上の省に電力不足による影響が拡大しました。こうした制限により製鉄業や製造業が大きく影響うけることになりました。崑山市(上海の北西50km)では日生産の半分が停止なったり、広東州の仏山市では深夜から早朝にかけてのみの操業ができるなどとなっています。その原因として、中国の発電量の70%を占めるとされている石炭火力発電所の燃料不足、石炭価格の高騰が報道されています。2021年10月6日の時点で石炭の価格は、2020年の価格の5倍以上となっています(図2)。

アナリスト松尾豪氏によれば、この2021年9月に至るまでに以下のような経緯があったとのことです。

  • 2020年12月から2021年1月:重慶市の吊水洞炭鉱でガス突出事故が発生、18人が犠牲になった。これに伴い、国内炭の産出量が減少し、石炭価格が急騰。そうした中、寒波により電力需要が急増。LNGスポット調達に走る事業者が続出し、JKM急騰に繋がる(この際、日本のLNG調達価格にも影響)。12月には国内主要都市で計画停電が相次ぐ。
  • これに対して国家発展改革委員会はLNG価格統制を強化。中国国内では輸入LNGは自由化されているが、国内産出ガスとパイプライン輸入のガスは国家発展改革委員会の価格統制が可能。これにより、LNGスポットの高値調達意欲が減退し、JKM高騰も沈静化。価格鎮静化には、パイプラインによるロシア・トルクメニスタン産の天然ガス調達増も役立った。このタイミングからロシアからのガス輸入が増加した点は注目される。
  • 21年5月:南方電網が計画停電実施中であることを認める。経済回復による急激な需要増に対して、電力システムが対応できていないことが原因とみられる。この間、国家発展改革委員会は広域融通指示や、石炭・LNG火力発電所に対する補助金拠出などの対応策を採った。
  • 21年6月:国家発展改革委員会月次定例会見の場で、南方電網管内の計画停電は終息見込みと公表。
  • 21年7月:国家電網、電力需要が過去最高を記録と発表。
  • 21年7月:中国国内炭鉱で、12月の重慶ガス突出事故を受けた安全規制強化の影響で採炭量が減少、中国国内の石炭価格が上昇。値上げが認められていないため、発電事業者の業績が懸念される事態に。
  • 21年7月:石炭火力発電会社10社の2021年上半期の業績は、4社が赤字計上、5社は利益急減となった。

こうした経緯のもと、10月3日の中国の状況を説明した記事を紹介するとともに、その原因に関する考察を記載したいと思います。

図1 中国における電力制限状況
図2 2021年10月6日時点における石炭価格の推移

記事:Bloomberg, 2021/10/3, “China’s Energy Crisis Highlights Weaknesses in Xi’s Power Plans”

背景

記事によると次の通りである。

中国のエネルギー危機は、習近平の最優先事項の1つであるエネルギー安全保障の弱点を浮き彫りにした。これは、今後数年間で電力システムに影響を与える可能性がある。世界第2位の経済大国を苦しめている混乱を繰り返さぬよう、電力網と電力市場を再設計し、燃料備蓄を行い、より柔軟な再エネを追加するのに必要な措置を取らなくてはならない。

電力供給側の状況

現在の危機の引き金の1つは、高価な石炭を購入しなければならない一方で高度に規制された電力市場で売電する必要があり、その結果大きな損失が生じるために発電所を閉鎖せざるを得なかったことである。現在の価格設定制度は、固定の電力ベンチマーク価格から、ある程度の柔軟性があるハイブリッドモデルに変更されてはいるものの、ヨーロッパと米国の一部で見られるフリーフロート率をはるかに下回っている。そのうえ図3にあるように、今年ほど火力発電所需要が増えたことはなかった。

図3 火力発電所需要の変化

湖南省は、10月から石炭コストにリンクする価格設定のシステムをテストする予定である。広東省は、より多くの供給を奨励するために電力価格を引き上げた。そして政府は産業ユーザーの電力価格を上げることを考えている。しかし、さらなる自由化の主な障害は、製造業者を含む下流のユーザーへの潜在的な影響である。ブルームバーグNEFの中国研究責任者であるKou Nannan氏は、「中国がエネルギー市場を自由化すれば、十分なエネルギー供給を提供できるが、エネルギーコストの上昇は地域経済にも影響を与える可能性がある。」と述べた。

連携性

異なる地域の電力網間の連携性が向上すると、局所的な不足が緩和される可能性がある。中国の上位2つの送電網事業者、中国国電網は国の80%以上を監督し、中国南方電網は5つの南部州を運用している。2社は全国に長距離送電線を建設中ではあるが、完成にはまだ時間がかかる。エネルギーコンサルタント会社のLantauグループのマネージャーであるDavid Fishman氏によると、現時点では大きな地域差があり、国内、場合によっては同じ州内でさえ、物理的にも調整の観点からも大きな違いがあり、州間の電力融通はほぼされていない。「そのため、国の一部には余力が大きく、別の場所には電力が不足している可能性がある。接続性が高いほど、より効率的に供給を割り当てることができる。したがって、高圧送電線とより多くの地域の送電線にもっと投資すべきである。」と David Fishman氏 は述べている。

再エネ導入

一部の専門家によれば、世界的なエネルギー危機は、再生可能エネルギーが成熟する前に、化石燃料への投資をやめることへの危険性が露呈したと言える。ブルームバーグNEFのKou氏は、「中国政府はおそらく石炭産業の撤退についてもう少し慎重になるだろう。」と述べた。

図4 発電設備容量の推移

しかし現状では、中国が世界的な入札競争の中でガスと石炭を取り合うことを余儀なくされており、国内の風力、太陽光、水力は安全保障上利点があるともいえる。大量のクリーンエネルギーを導入するのと並行して、再エネの変動を制御するために、大規模な揚水発電や蓄電池などの柔軟なエネルギー貯蔵への投資も必要でである。

「過去数か月間、中国や他の多くの経済圏において、化石燃料価格に対する脆弱性が露呈し、ゼロカーボンエネルギー源への切り替えのインセンティブが示された。」とClean Energy and Air研究セ​​ンターの主任アナリスト、Lauri Myllyvirta氏は述べている。

Lantau島のFishman氏によると、中国の再生可能エネルギーが急増しても、石炭はすぐになくなることはなく、9月の混乱より燃料供給と埋蔵量管理に深刻な問題が発生したという。発電所の貯蔵燃料は枯渇しており、冬が始まる前から価格が高騰している。

このような不足を補う1つの方法は、国有の石炭貯蔵施設を全国に建設し、戦略的な石油埋蔵量の成功に倣うことである。これは将来の必要な時にバックアップを提供するだけでなく、需要が低い期間に購入することで鉱夫を支えることになる。この計画はすでに進行中であり、昨年の冬の電力不足の後、2025年までの同国の5か年計画には(第14次 五ヶ年計画 )、石炭備蓄能力を強化するということが含まれていた。2021年6月には政府はこれらの在庫を6億トン、つまり年間消費量の約15%に増やすことを目指していると述べていた。

考察

中国の13次五ヶ年計画(2016-2020)では、2020年の石炭生産量を39億トンを上限とする石炭抑制政策を掲げ、2020年までに過剰な生産量能力を8億トン削減、炭鉱数を9700から6000箇所に、石炭企業を6000社から3000社へ削減する目標とされていました。その結果、生産量が前年の37億トンから34億トンまで落ち、輸入量が急増していますが、石炭事業者の整理統合は着実に進み、過剰生産能力はは目標を上回る10.6億トンの削減、炭鉱数も目標以上の5000ヶ所まで減りました。14次五ヶ年計画(2021-2025)では、さらに4000ヶ所まで減らす計画になっていました。少し古いデータですが、図*に示すように輸入は2億2千万トン、国内生産の1割にも満たず、更にオーストラリアからは4600万トン程度ど、1-2%でしかありませんので、オーストラリアに対する制裁量はたかがしれています。つまり、今回の電力不足の原因や価格の上昇は、中国のオーストラリアへの制裁は全く関係なく、ほぼ自国のエネルギー政策における需要と供給のミスマッチといえそうです。

こうした状況を受けて、ゴールドマンサックスは、中国の経済成長に著しく影響がでるだろうとの予測しています。

また中国政府はエネルギー会社に対して今年の冬に備えて何としてもガスや石炭の確保を指示しています。

現在、中国だけではなく、ヨーロッパでもエネルギー価格、特にLNG価格の高騰が著しく、冬に向けて収まりそうにない中、中国政府のこうした指示は、国内企業や地方政府に混乱を生じさせ、さらなるエネルギー価格の暴騰に拍車をかけそうです。

以下に参考として、関連記事を添付します。

2021/9/30, Time, “Will China’s Energy Crisis Make It More Reluctant to Fight Climate Change?
2021/9/29 , John Kemp, “China’s widening electricity crisis caused by coal shortage
2021/9/28, John Kemp, “China coal production, transportation and consumption
2021/9/28, Bloomberg, “中国が電力危機に直面、特有の事情と経済への影響
2021/9/28, Sup China, “The three causes of China’s power outages
2021/9/28, Reuters, “China energy crunch triggers shutdowns, pleas for more coal

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Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など