記事:2021月2月19日 Wood Machenzie “The Texas energy crisis: its causes and consequences”
記事によると、カナダからメキシコ湾に向けて寒さが移動し、2月16日にサンアントニオにおいて過去最低気温-11度を記録した。
その結果、数百万人の家に停電が起こり、数々の致命的な脆弱性が明らかになった。今後、学ぶべきことが多くでてくると考えられるが、この災害に関する概要が明らかになった。再生エネルギーの問題が多く議論されているが、実際は、発電出力が予想外に得られず、それは火力発電所の多くでそうであった。図は各発電所の設備利用率である。極循環による急激な温度変化であり、極めてまれというわけではない。
先週(2021/2/8-2021/2/14)、電力市場において、明らかな兆候は天然ガスの価格状況から現れた。水が凍りだしガスの井戸周りの温度が低下、供給量が減って、ガス価格が上昇、平時は3 USD / MMBtuが600 USD / MMBtuまで上昇した。テキサスでは供給設備が十分に寒さの準備がされていなかった。そのため停電が起こり、更には通常の陸送についても様々な運搬上の問題が拍車をかけるのではないかと憶測されていた。
こうした問題は、雪がテキサスに振り出したのに合わせて、週末にかけて現実となった。月曜日の朝(2021/2/15)、送電網運営機関であるERCOTは、輪番停電を余儀なくされ、数百万人もの生活に影響を与え、多くは数日間続くとみられた。Wood Machenzieのリアルタイムでのモニタリングによれば、2/14-2/15日にかけて、すべての電源において問題が生じていた(図2)。
全電源において、冬の寒さにより、出力が大幅に落ちた。
今回のこの停電の主な原因は、今回直面した厳しい寒さに対して、設備対策がなされていなかったことである。ERCOTは、昨年11月に公表したレポートの中で、様々なシナリオを想定していたが、これほどまで電源が落ちてしまうことは考えていなかった。
更には、停電がガス生産に問題を与えて、電源の問題が更に悪化した。天然ガス価格は、いくつかの取引で、1,250 USD / MMbtuまで高騰するまでとなった。
雪ダル式に天然ガス価格が上昇、平時が3USD/MMbtuが、一時期1,250USD/MMbtuまで高騰した。
木曜日(2/18)の夜、200万人の顧客の停電が収まったものの、依然、30万人もの顧客の停電が続いていた。金曜日には気温が上昇すると予測されていたが、この危機の損害が明らかになるまでには時間がかかると考えられるが、こうした事態に対する批判は続くものと考えられる。
今回、テキサスで見られた気温低下は稀なことではあるものの、2011年にも同様の事象が生じている。たしかに、2011年は今回ほど、問題ではなく、また広がりを見せなかったとはいえ、同様の事象であった。この際の災害については、Federal Energy Regulatory Commissionとthe North American Electric Reliability Corporationによりレポートが作成されており、ここでは、厳冬に対する送電網への備えは難しいと認めているものの、いくつかの必要な事項については、それほどお金をかけなくても対策が可能であり、冬に対してより強固な抵抗力が得られると指摘している。
更にこの危機は、アメリカの電力市場において、再生可能エネルギーの大量導入に対して疑問を呈している。こうした傾向は、極循環による災害に対して、石炭火力発電所や原子力発電所が廃止されていくことに関する示唆を与えている。つまり、こうした火力や原子力がなくなった場合、5倍もの風力や太陽光発電が必要であり、より天然ガスに依存することになる。長期的に原子力が廃止されていく状況において、脱炭素を実現していくには非常に難しい状況であることは覚えておくべきであろう。
原子力及び石炭火力を廃止する傾向の中、今回のような停電を抑えるには、風力や太陽光が5倍、また天然ガス火力による依存度を上げる必要がある。
考察
今回のテキサスの停電は、再エネが問題視されていましたが、本質的には、全電源また送電網において、十分な設備投資による備えがなされていなかったことのようです。
テキサスはアメリカで最も進んでいる電力自由化市場でもありますが、そのため、各発電会社が極限まで最適化した結果、10年ぐらいで生じるこうした災害事象に耐えられるだけの設備、またインフラがなかったということだと思います。しかしながら、企業とすれば当然でもあり、責められるものではないように思います。
またテキサスでは、電力量市場のみで、容量市場が全くなかったことも、そうした投資がなされなかった原因とも考えられるのではないでしょうか。
こうした事象は、日本の電力市場を考えるうえでも、他山の石とせずに、議論されることが望まれます。