記事:World Nuclear News, 2021/04/21, “Nuclear to be included in Delegated Act of EU taxonomy”
記事によると、EU 委員会は21日、持続可能なエネルギーとして 原子力 を EU タクソノミー の対象とすることを発表した。また EU 委員会は、「Communication from The Commission to the European Parliament, てぇCouncil, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions」としてその内容について発行している。
上記に関して昨年3月、 EU 委員会内の 技術検討グループ ( TEG )が EU タクソノミー に関する最終提言を発表した(関連は下記を参考)。ここには、投資家や企業がこのフレームワークに対して報告する際のガイダンスも含まれている。
そこには、「原子力が気候変動の緩和に貢献しているという明確な証拠がある一方、重大な被害を引き起こす可能性があることも踏まえ、より広範な技術的検討を行うべきである」としていた。
その後、 EU 委員会が組織内の 共同研究センター ( JRC )に対し、 原子力 が”重大な被害をもたらさない”のかいう点に関して技術報告書の作成を求めた。つまり、既存の、また将来の環境への影響、生成される 原子力 廃棄物の管理方法を含め、 原子力 発電のライフサイクルの影響についての内容を求めたものであった。 JRC は報告書において、「 原子力 は持続可能な他のエネルギーと比較しても、人体や環境へ害を及ぼさない」と結論付けた。
よって、 JRC の報告書を踏まえて EU 委員会は、 原子力 が EU タクソノミー の規定に基づき詳細なレビューがなされることを条件に、原子力を EU タクソノミー 対象とすることと決定した。
更に、委託法令では天然ガスとそれに関連する技術を、 EU タクソノミー 規則の10(2)項の制限にはいる限りにおいて、移行段階の技術として認めることとした(これに関連する記事は以下を参照)。この委託法令は、個別の照査手続きが終わり次第、適用されると EU 委員会は述べた。
そうした中、Foratom(欧州原子力取引組織)はこの決定を歓迎している。Foratomの局長であるYves Desbazeille氏は、「 EU タクソノミー が市場を阻害しないように、 EU 委員会は、この委託法令をできるだけ早く発行すべきである。2021年9月までには完了し、 原子力 発電がこの委託法令の第2改訂版に加えらえっるものと信じている」と述べた。
なお、 原子力 は EU における低炭素エネルギーの最大の供給源であり(26.7%, 2019)、水力(12.3%)、風力(13.3%)、太陽光(4.4%)などの再生可能エネルギーの供給量を上回る。
考察
欧州を含め、 カーボンニュートラル に向けた目標を達成するには、 原子力 発電は不可欠であるという結論に達したものと考えます。
加えて同日には、 EU 議会から2030年の 温室効果ガス 排出目標を宣言されており(1990年比で55%の削減)、アメリカにおいても、ホワイトハウスより50%以上の削減を目標としています。これらに伴う、投資及び融資合戦が各国で今後繰り広げられるものと考えられます。
また、 カーボンプライシング に関する議論が日本でも始まっています。各国の動きをまとめた環境省の「炭素税・国境調整措置を巡る最近の動向」は参考になるかと思います。その他、2020月10月以降、様々な本も出ているので、そうしたものを参考に記事を見ていくと、全体がつながって見えるようになると思います。
図解でわかるカーボンリサイクル ~CO2を利用する循環エネルギーシステム (未来エコ実践テクノロジー)
一般財団法人 エネルギー総合工学研究所 (著)