記事:Reuters 2021/3/22 “EU to offer gas plants a green finance label under certain conditions: draft”
報道によると、欧州委員会は、ガス火力発電所にグリーンラベルを発行しないという当初の提案に対して、いくつかの国から批判を浴びたのち、一定の条件のもと、持続可能な投資として、グリーンラベルを発行するという案を用意している。
欧州委員の新たな提案は、3月20日に共有されたが、一定の条件を満たすガス火力発電所を「持続可能な投資」に分類することとしている。ただし、電力以外に熱・冷却エネルギーを生産する火力発電所に対してであり、非常に厳しい排出条件を満たし、2025年まで運用するとした場合である。
欧州委員会の提案は、「持続可能な投資」税制の一つであり、それに該当する経済活動を明確に分類するステップである。欧州委員会はコメントを差し控えているが、欧州委は4月21日までに環境配慮型投資に関するルールを定めて来年から適用する方針である。
欧州連合の狙いは、資金を環境にやさしいプロジェクトに向かわせ、気候変動の原因となっている温室化ガスの排出を抑えることである。
しかしながら、この税制は、天然ガスに対する投資をどのように扱うか、欧州連合の国々で議論にいなっており、欧州委員会は昨年11月の当初案を修正せざるを得なかった。
天然ガスを燃料とする火力発電は、石炭を用いる火力発電と比べるとCO2排出量が半分にとどまるため、ポーランドやドイツは石炭利用停止の手段としてガス利用への切り替えを計画している。しかし、ガスの燃焼がCO2を排出することは避けられず、さらにガスインフラから流出するメタンガスが、石炭からガスへの切り替えがもたらす排出量削減を相殺してしまうリスクも指摘されている。
厳しい基準とは?
基準としては、CO2排出量が大きい化石燃料(石炭など)利用の既存発電所をリプレースして、生産されるエネルギー単位量(kWh)当たりCO2排出量を50%以上削減し、2025年まで運転し、将来的には低炭素燃料を使用する可能性があり、kWh当たり排出量を270CO2換算グラム以下に抑えることなどがあげられている。
なお、発電のみを行い、熱・冷却エネルギーを生産しないガス火力発電所や、熱・冷却エネルギーも生産するが、CO2排出量が大きい既存発電所をリプレースするわけではないガス火力発電所に関しては、欧州委は当初案と同じ立場を堅持しており、ライフサイクル全体での排出量がkWh当たりで100CO2換算グラム未満であることが、「持続可能な投資」と認定されるための条件となる。これは実質的には、CO2回収システムを装備する必要があることを意味する。
考察
欧州においても、一部の達成可能な国以外では、自国の産業を考え、同提案に反発がでていました。これを理由を付けて緩和したものです。
同日ですが、日本においても、2030年のCO2削減目標に関して報道がなされています。
13年度比26%減から拡大との方向であり、再エネの電源比率の上積みもしくは原子力発電の稼働が欠かせませんが、再エネに関しては足元は18%であり、2030年時点でも24%程度であることから、非常に難しい状況であり、現状のFIT価格等を勘案すると、容易ではありません。カーボンニュートラルに向けた検証については、下記の記事を参考ください。やはり、少なくとも2030年までは、既存の原子力発電を使いつつ、再エネや水素・アンモニア発電など、対応していくのが現実的であると考えられます。
https://renewablenergy-pro.com/2021/03/09/carbonzerostrategy/
アメリカについて、ケリー国務長官のコメントにありましたように、欧州の基準には乗れないの立場であることから、日本はアメリカと足並みをそろえて、欧州と対抗すべきと考えます。
米国は4月22日に主要排出国などを集めた気候変動に関する首脳会議(サミット)を開かれますが、上記を含めて注目されるところであり、日本の外交力が問われると考えられます。