電力関連記事

欧州委員会 ドイツの 褐炭 石炭火力 発電所閉鎖補償金を巡る本格調査を開始

記事:3月2日 EURACTIV “Brussels opens in-depth investigation into Germany’s coal phase-out plan”

記事によると、欧州委員会 は、ドイツの 石炭火力 発電事業者にドイツ政府が約束した補償金43億5000万ユーロについて、 欧州連合(EU) が規定する国家補助に該当する疑いがあるを表明した。


ドイツ議会は昨年6月、補償に関して承認を与えていた。2038年までに 褐炭 石炭火力 発電所とその 褐炭 採掘を全廃することに対して、閉鎖に伴う逸失を補償する名目で、 RWE と LEAG の両社に支給されることになっている。ドイツ政府は 欧州委員会 にその計画を決定直後に伝えていた。

しかしながら 欧州委員会 は、3月2日に、その問題に対して、本格調査を行うことを決めたとしている。欧州連合の競争委員会の委員長は、「現状、欧州委員会 の概略的な判断として、褐炭 採掘業者に優位なドイツの措置は、国家補助に該当すると考えられる。さらに、それがEUの規則に合致していない疑いがある」と述べた。

この補償金を巡っては、金額の算定が政府と両社の間の非公開の協議を経てなされたことから、ドイツ国内で各方面から批判の声が上がっていた。シンクタンクのエコ・インスティチュートは、去る1月の時点で、金額が20億ユーロ過剰であると試算していた。シュピーゲルも、 再生エネ の原価が低下してきたため競争力がなくなり、 LEAG はいずれ 褐炭 石炭火力 発電所を閉鎖することを計画していたと報じていた。 欧州委員会 も、 褐炭 石炭火力 発電所の閉鎖タイムラインは、 欧州連合 全体に渡る十分な気候変動対策を確実にするとするそれよりもはるかに長く、ドイツでは2038年までには採算が合わず、むしろ損失が増えるはずと述べている。 欧州委員会 は、詳細調査を実施し、そうした懸念が正しいかどうかについて決定を行う。また、いかなる関係機関も、調査中において、コメントを提出できるものとしている。

考察

AFPでも同様な記事が記載されています。

日本では、ドイツ の 再エネ 導入及び 脱原発 を賛美していますが、そもそも ドイツ国内 の 原子力 発電の比率が低いが、 石炭火力 発電の比率が高く、これらを撤廃するといっているものの、今後は ガス火力 発電に依存するという構造になっています。

というのも、 ドイツ では 褐炭 については、100%自給しており、重要なエネルギー源としてこれまで利用されてきた経緯があります。そのために、この記事にあるように、 褐炭 石炭火力 発電事業者に対しても、15年間で43億5,000万ユーロの賠償を支払うと約束し、さらに、2026年及び29年に 褐炭 石炭火力 発電の全廃が可能か再度の評価・検討を行うことにしています。しかしここにきて、この43億ユーロの妥当性に、他国から疑問を呈されている状況です。可能性として、ドイツ政府は補償を支払わない一方、2038年のコミットを免除させる一方、発電会社が世界の流れから 石炭火力 発電所を撤廃せざるを得ない状況を狙っている可能性もあります。

こうした状況から、ロシアから天然ガスを輸入する予定のガスプロジェクト ノードストリーム2は非常に重要です。しかし、同プロジェクトに関わる企業はアメリカからの制裁があるなど、外交的に非常に難しい状況にあります。また今年の冬で各地で起こりました停電は、ガス火力 発電所依存し、燃料である 天然ガス もしくは LNG 不足したために生じています。そういった意味でも、敵対国であるロシアに主力電源燃料を握られるのはエネルギーセキュリティー上、非常に問題があるといえそうで、電源構成の見直しが生じるかもしれません。

テキサス停電は何が原因なのか?再エネ導入?インフラ設備不良?2021年2月15日にテキサスで起こった停電に関する記事をまとめ、考察を行っています。加えて、ERCOTの見解も記載。今後の日本電力市場設計にも影響を与える事件です。...
図1 ドイツの電源比率をkwhベースで記載

加えて、2019年時点で発電量250TWhに対して、輸出を70TWh、輸入を40TWhを行っており、 再エネ の発電量が多い際には輸出、少ないと輸入と、他国の融通により電源を支えています。つまり実際の消費電力は、図1の構成とはことなり、多くの電力が 再エネ ではない電力から得ているものと言えます。

図2 ドイツの電力輸出入
データソース:Arbeitsgemeinschaft Energiebilanzen, Stromerzeugung in Deutschland ab 1990 nach Energietraegern

このようにドイツは、産業構造を考えながら、かつ他国の融通をうまく使って自国の電源の安定及び利益を得ています。状況の全く違う日本において、電源議論を一部を切り取り、ドイツをまねろとするのは、あまりに無責任な議論といえるのではないでしょうか。

ABOUT ME
Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など