資金調達

資金調達 プロジェクトファイナンス とは?

プロジェクトファイナンスの概説

プロジェクトファイナンス

再エネ プロジェクト( 再エネ 電源の開発)のように、大型の投資が必要である場合、資金を如何に調達するかが、将来の事業収入の安定、また建設費用などのプロジェクトコストの抑制と合わせて、重要な事項となります。 プロジェクトファイナンス とは、融資の担保をプロジェクトの資産及びそれから得られる収益のみとして、プロジェクト資金の融資を行う手法です。これに対して従来の 企業融資(Corporate Finance)を利用したプロジェクトの開発は、開発を行う スポンサー がプロジェクトのリスクを負担します。つまり、 プロジェクトファイナンス は、資金の貸し手であるレンダーもリスクを負担するということになります。そのため プロジェクトファイナンス において、レンダーと借り手とのリスク分担を明確にする必要があり、融資契約書は非常に複雑なものとなります。

プロジェクトファイナンス を行う大型プロジェクトでは、資金が巨額であるため、リスク分散という観点から、複数の企業(スポンサー)による合弁会社(特別目的会社:Special Purpose Company:”SPC”)とすることが多く、スポンサーもしくはSPCがプロジェクトを開発することになります。

プロジェクトファイナンス による資金調達の観点から言いますと、このSPCが資金の借り手となりますが、スポンサーは、SPCへの出資金以外は、原則、プロジェクトの借入金への補償は行いません。そのため、 プロジェクトファイナンス は、ノン・リコースと呼ばれています。ただし、プロジェクトの リスク 分担によっては、レンダーがリスクを許容できず、スポンサーに一部負担を求めることがあり、この場合、リミテッドリコースと呼ばれています。一般には、 プロジェクトファイナンス =ノンリコースと認識されていますが、そのケースはほとんどなく、あくまでリミテッドリコースと認識すべきです。

プロジェクトファイナンス のメリットとして、プロジェクトの収益性でのみ巨額資金が借りることができること、借入資金をオフ・バランスすることが挙げられます。後者に関しては、スポンサーのプロジェクト会社に対する持ち株比率が50%以下であれば、 スポンサー 企業は財務諸表上、プロジェクト会社を連結対象外にできることになります。 再エネ のうち、大型プロジェクトでは、巨額の資金が必要となりますので、複数社で出資に伴うリスクを分散させることができるだけではなく、オフ・バランスすることで、スポンサー企業の借り入れへの影響を小さくできることになります。

図1 コーポレートファイナンス
図2 プロジェクトファイナンス
表1 コーポレートファイナンスと プロジェクトファイナンス の比較

最近では、 再エネ の 資金調達 方法として、グリーンボンドによる資金調達も行われています。環境省が「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」に概要が示されています。日本では、五島沖における風力発電プロジェクトで調達手法として使われ、現状事業化に至っています。

リスクアセスメント

プロジェクトのリスクを抽出、対応方法を考えるのは、スポンサー企業やSPCだけではなく、関係者、ここでいえばレンダーも同じとなります。レンダーは、Due Diligence (”DD”)を行う中で、外部のアドバイザーや自社リソースを使うことで実施し、開発者側(スポンサー企業やSPC)との協議を通して、リスクを評価することになります。レンダー側と開発側で目線が異なる、リスク配分の考え方が異なるため、そのすり合わせが開発側にとってレンダーとの交渉のポイントとなります。開発側はレンダーからの質問や要求にこたえられなければ、 プロジェクトファイナンス を組成できないことになり、ひいては 資金調達 ができないという結果となります。よって、初期の段階から、レンダー目線でのリスク分析、リスク対応を策定できる能力が重要と言えます。

具体的な リスク 管理については、「再エネプロジェクトにおけるリスク管理」に記載しています。

リスク 管理 - 開発者目線からの考察プロジェクトマネジメントのうち、再エネプロジェクトにおける リスク 管理について解説する記事。ここでは、開発者目線での リスク 管理を記載している。...

リスクに対する対処方法は回避、低減、移転、所有に大きくは分けることができます。スポンサーの債務保証がない プロジェクトファイナンス において、レンダー側もリスクを最小限にするべく、スポンサーにリスク対応を求めてくることになります。特にリスク対応策のうち、移転の場合、政府、請負者、保険会社などに負担をしてもらうことを意味し、政府にはPPAやConcession Agreementにおいて、請負者には建設契約にて、保険会社には保険契約書にて、そのリスク分担を記載、合意していくことになります。

プロジェクトファイナンス 調達の流れ

事業可能性調査(”FS”)において、経済性分析がなされますが、その結果、事業が可能であると判断されれば具体的な 資金調達 方法について検討がなされることになります。コーポレートファイナンス、グリーンボンド、 プロジェクトファイナンス などがあるわけですが、 再エネ プロジェクトのような大型の案件においては、先に挙げたメリットの点から プロジェクトファイナンス を選択されることが多いです。しかしながら、様々な調達手法があるため、 事業可能性調査 後、財務アドバイザーを雇用し、プロジェクトにとって最も有用な資金調達方法を検討していくことになります。

ここでは、 プロジェクトファイナンス を主要な 資金調達 方法として選択した場合の、 資金調達 の流れについて概説していきます。

図3 プロジェクトファイナンス による資金調達の流れ

Step 1:財務アドバイザー・主要レンダーの選定

大型プロジェクトでは、融資についても、1つの銀行だけでは必要な額を調達できない可能性が高いため、財務アドバイザー(Financial Advisor :”FA” )を通じて、複数の銀行からプロポーザルの提出を依頼します。そこには、 プロジェクトファイナンス の具体的な条件とともに、その銀行が可能な引受希望額(アンダーライト金額)の記載を要求します。ただし、その時点では十分な情報がない場合も考えられますので、保留条件も合わせて提示されることになります。財務アドバイザーは、スポンサーと連携して、プロジェクト情報の概要書(Project Information Memorandum)を作成し、対象とする銀行に提示をして、プロポーザルの提出を求めていきます。提出されたプロポーザルをもとに、プロジェクトに必要な金額に到達するように、スポンサーにとって有利な条件を提示した銀行を選定し、シンジケートを組成します。

Step2: Due Diligence

Due Diligence(”DD”)を開始するために、レンダー側のアドバイザーを選定・雇用していきます。銀行団の内部リソースだけでは、 DD により リスク を判断できないため、弁護士( Legal Advisor )、技術コンサルタント( Technical Adviser )、保険アドバイザー( Insurance Advisor )などを雇用することになります。財務ドンバイザーについては、 レンダー 自身が行うことが多いです。 スポンサー 側はこれらおアドバイザーとも交渉していくことになるで、 スポンサー の内部リソースでは補いきれない場合は、 スポンサー 側もアドバイザーも雇用することになります。

DDに平行して、融資契約や担保設定契約書などの契約書を作成していくことになります。 プロジェクトファイナンス では、担保がプロジェクトの収入を含むプロジェクトのみであるので、契約書において詳細に記載していくことになります。契約書は極めて複雑、かつ多肢に渡ることになり、双方の弁護士の役割が非常に重要になります。アドバイザー費用の中でも、この弁護士費用が、 プロジェクトファイナンス では高額になる傾向があります。

下記にプロジェクトファイナンスに係る契約に関して詳述しています。

プロジェクトファイナンスに必要な関連書類
プロジェクトファイナンス 組成に必要となる関連契約書類再エネ事業において プロジェクトファイナンス を組成する場合、必要となる契約関連図書について、概説している。...

Step 3:Financial Close

融資契約の調印が終わると、貸付の実行手続きとなりますが、実行には国の許可、出資金の振り込み、担保権の設定など、 先行条件(Conditions Precedence)の充足が必要となります。そのため、実際の資金の貸し出し開始には、調印後も時間がかかります。この 先行条件 が満たされて初めて、 Financial Close(”FC”)となりますので、一部手続きで時間がかかるものの、確実に実行されるものについては、Conditions Sequenceとして、FC後に充足することが求められます。

第二回以降の貸付金の支払いについては、事前に決められた金額の範囲において、工事の進捗に応じて実行されていきます。レンダーはこの進捗及び融資条件が確実に充足されているか、逐次監視を行い、充足がされていない事項が発見された場合、改善、最悪、融資停止が行われることになります。そのため、スポンサー、工事進捗の管理及び融資条件の充足状況が確認でき、不具合事象が生じた場合に対応できる体制を求められることになります。

まとめ

プロジェクトマネジメントのうち、資金調達の代表として、 プロジェクトファイナンス に関して記載しました。 プロジェクトファイナンス は、テーラーメイドであるため、一定のやり方があるわけではありません。 プロジェクトファイナンス を組成していくは、専門家を使いつつ、調整・交渉していく必要があります。そのためには、関連する知識を広く持つ必要があります。本ブログでは、 プロジェクトファイナンス を含め、 再エネ プロジェクトを開発するのに必要な知識やスキルに関して、データベース化できるようにしていきます。

また、プロジェクトファイナンスを全般を学ぶうえで、下記の図書も参考になると思います。

ABOUT ME
Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など