記事:Renewable Econormy, Renewable Econormy, 2021/3/31, ”Genex locks in EPC contracts, other partners for flagship pumped hydro project”
ここ数十年ぶりにオーストラリアで建設される 揚水発電 設備に関するプロジェクトの一つが、前に進むことになりそうである。プロジェクトの開発会社であるGenex社が建設のキーパートナーとの契約ができたと報道した。
Genex社は、Kidston金鉱山の跡地に、この地域のクリーンエネルギー地区の一部として、出力250MWで電力量が2,000MWhの 揚水発電 計画を提案している。
2021年3月31日の報道によると、Genex社は、McConnell DowellとJohn Holland GroupによるJoint Vetunereと建設契約を締結した。JVダムインフラ設備、地下設備、発電に関わる設備の建設を行う。
Kidston 揚水発電 プロジェクトは、Genex社にとって、非常に重要なプロジェクトであり、2つの廃坑となった金鉱山跡を用いて 揚水発電 を行うものである(動画を参照)。既に1つの太陽光発電は運用されており、今後追加で太陽光発電及び風力発電を建設することを予定している。
Beon社は、Kidstonの変電設備を建設予定であり、 揚水発電 所と電力網とをつなげることとなる。Genex社は、送配電会社であるPowerlink社に対して、建設開始指示(”Notice to Proceed”)を発行し、Kidstonと電力網とつなげる新たな送電線の建設を開始する。その新たな送電線は、27万5千kV185kmであり、Kidstonから新たな開閉所までをつなげる。新たな開閉所は、Mount Foxに建設される予定であり、TownsvilleとCarins間の凡そ中央ぐらいに位置する。
この報道は、プロジェクトに必要な資金調達が確保できたに続くものであり、資本参加する候補との協議が失敗に終わり、ASX(Australia Stock Exchange)から新たに資金調達がなされた。
Genex社は先週、政府機関や既存の小売株主から資本金をA$115millionと、J-PowerよりA$25millionの投資を受けたと報道した。これでGenex社はKidston揚水発電所の資本の100%を確保したことになる。
Australia Renewable Energy Agency (“AREA”)はA$47millionの補助金交付により本プロジェクトを支援することに合意し、Genex社は、North Australian Infrastructure Facility(”NAIF”)からA$610Millionの資金を調達した。
Genex社のCEOであるJames Harding氏によれば「先週報告した通り、資本を確保することができたため、Kidston揚水プロジェクトに対するプロジェクトファイナンスは最終段階となり、今全てのプロジェクト合意がなされ、プロジェクトと国の電力網をつなぐ送電設備の建設を開始することとなった。」とのことである。
保守に関する契約をAndritz社と、Owners Engineer契約をタスマニア政府が有するEntura社と締結した。
Genex社が発表したプロジェクトの財務情報では、Kidstonは比較的安定した収入を、EnergyAustralia社と締結したEnergy Storage Service Agreementを通して得る予定となっている。
その契約を通して、Genex社は、EnergyAustralia社から定期的な収入を得ることができ、EnergyAustralia社はKidston 揚水発電 所から重要な局面で電力を確保することでできる。需要のピーク時に生じる価格スパイクに対して、同電力はリスク低減に役立つことを期待されている。
Kidston 揚水発電 所は、ここ数十年ぶりに新たに開発され、オーストラリアで計画されている水力プロジェクトの4番目のものであり、Snowy Hydro計画、Shoalhaven計画、Winenhoe Damに続くもの。
考察
本プロジェクトは、Snowy Hydro 2.0の流れをくんで進められている水力プロジェクトであり、元オーストラリアの首相のターンブル氏がこれまで推し進めてきた案件の一つであります。
Genex社が進めるプロジェクトは水力だけではなく、太陽光や風力もあり、諸元や位置図は以下の通りです。
このうち、Kidston 揚水発電 所の詳細は次の通りです。
項目 | 諸元 |
位置 | Far-North Queensland |
容量 | 250MW (125MW x 2 Units) |
発電可能時間 | 8時間 |
貯水容量 | 2,000MWh |
上池 | Wises Pit (52ha) |
下池 | Eldridge Pit (54ha) |
Start Up time | 30seconds |
Max Gross Head | 218m |
記事にも書いたように、今回このプロジェクトがFinancial Closeが迎えられたのも、長期の固定収入としてEnergyAustralia社と締結したEnergy Storage Service Agreement。というスキームが成り立ったからです。いわゆるCapacity Paymentのようなものであると想定されますが、詳細な契約内容を知りたいところです。 揚水発電 所は、マネタイズが難しく、必要性やそのポテンシャルは昔から言われているものの、収入が見込めず、実施に至らないプロジェクトが多数あります。今回はオーストラリア政府の強い後押しがあったため、成立したものと考えられますが、相当紆余曲折があったものと、資金調達の紆余曲折から想像されます。
もう少し詳しい情報が手に入れば、続報を記載したいと思います。
オーストラリア 揚水発電 に関わる関連情報
Kidston
2021/5/24,”Construction to begin on Kidston Pumped Hydro”
Construction to begin on Kidston Pumped Hydro | Energy Magazine
Others
2021/7/9, “NSW offers grants to secure 3GW of pumped hydro to replace coal”
NSW offers grants to secure 3GW of pumped hydro to replace coal | RenewEconomy