電力関連記事

テキサス州電力評議会 ( ERCOT )電力逼迫を受けた緊急事態宣言予告を取り下げ

記事:Austin’s NPR Station, 2021/4/13, ” ERCOT Ends Energy Conservation Alert After Warning Of Emergency Grid Conditions”

記事によりますと、 テキサス の2021年4月13日の夕刻から夜間にかけて、以下のような状況であったとのことです。

テキサス州電力評議会 ( ERCOT )は、9 p.m直前に火曜日に節電宣言を終了した。ERCOT は節電宣言に関して、「今回の節電要請は、緊急事態宣言 を発表することなく終了した。」と述べた。

この背景は次の通りである。 ERCOT は、4月13日の午後に管理下の電力網において、電力需要が供給を上回る可能性があると警報を発していた(図2)。そこで消費者や企業に対し、夜間に電力使用量を減らすよう促していた。ERCOTの電力網は、テキサス州の 90% を網羅している。

そうした状況において、節電要請解除後の記者との電話において、電力網計画運用担当の副社長Woody Rickerson氏は、「州全体のエアコン需要を急増させると予測していた寒冷前線がテキサス州までは下りてこずに、結果的に電力需給がひっ迫しなかった。」と述べた。またWoody Rickerson氏によれば何故今回、需給が逼迫しそうだったかについて、「電力需給が逼迫している主な理由は、メンテナンスのために多くの発電所が停止しているからである」と述べた。4月に入るまでは2月の冬の寒さによる設備への影響を軽視していたものの、実際には修復が必要な損傷もあったことをWoody Rickerson氏は認めた。Woody Rickerson氏は、「そうした損傷による影響も、我々が今回考慮している停止中の電源として入っている。」と述べた。

最近、電力網運用者による毎日の「見通し」は、需要と供給が逼迫しており、需要が供給を超える可能性があるとしていた。しかし、ERCOT が警報を発したのは、2月の壊滅的な停電以来初めてだった。

テキサス停電は何が原因なのか?再エネ導入?インフラ設備不良?2021年2月15日にテキサスで起こった停電に関する記事をまとめ、考察を行っています。加えて、ERCOTの見解も記載。今後の日本電力市場設計にも影響を与える事件です。...

ERCOT は、電力網上の需要を減らすか、使える供給力を復帰させるために警告を使うことができる。需要が供給を上回った場合、計画停電は、電力網が支障を起こさないようにするための最後の手段である。なぜ電力システムは最近、このように危機的な状況にあるのか、その一端は、2月の冬の嵐による発電所の停止にある。

コンサルティング会社ABパワーアドバイザーズの副社長、Caitlin Smith氏によると、「多くの発電所が春にメンテナンスのために停止することは普通である。というのも、暑い夏の間、発電所が最大出力で発電できるようにするための処置であるからだ」と述べた。

しかしCaitlin Smith氏によると、「それらの発電所の半分はメンテナンスによる停止であるが、いくつかの発電所では、設備に損傷を受けたために、冬の嵐以来、発電所は停止している。」とも述べている。更に、「夏に計画停止を行いたくないので、このような時期に発電所と送電線が同時に停止している。」と、Caitlin Smith氏は述べた。Caitlin Smith氏は4月13日の ERCOT 理事会において、「2月の冬の嵐を踏まえ、システムの増強とメンテナンスのために停止が増加する。」と述べるとともに、それを示すグラフを示した(図1)。

OutageGraph.jpg
図1 2020年及び2021年の計画停止

また、UTのウェバー・エナジー・グループの上級研究員であるJoshua Rhodes氏は、「発電停止している発電所の多くは、天然ガス、石炭、原子力発電所という州の「蒸気発電」の一部である」と述べた。「それらの発電所の約半分はメンテナンスのために停止している。これらの発電所の一部は、2月の冬の寒さのために停止している。」と述べた。節電要請が発行される前に、ERCOT のスポークスマンLeslie Sopko氏は、「 ERCOT は、電力システムで予測される需要を満たす追加電源を確保する。」とも述べていた。

考察

上記の記事の前に、緊急事態宣言が発せられるとの記事が出ていたが、結果的には上記のように、13日の9時前に緊急事態宣言はないと ERCOT より報告がされました。図2は朝の時点における ERCOT による需給予測となります。

Image
図2 ERCOTによる需給予測(2021年4月13日午前)

この逼迫の理由がメンテナンスであり、状況は図1に示した通りとなります。その結果として、今回また 電力価格 が 高騰 している点も見逃せません。テキサス全体で200円/kWhとなっています。

Image
図3 テキサスの電力価格(2021年4月13日

こうした状況から節電要請>>緊急事態宣言という対応をとる予定でしたが、結果的には、緊急事態宣言は回避されています。

Image
表1 ERCOTの緊急対応表
ABOUT ME
Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など