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ノルウェー は、 EV 普及の有効なモデルなのか?

記事:Energy Post Eu, 2021/6/4, “Norway an EV role model? Their pathway is expensive and paid for with oil & gas exports”

ノルウェー が進んでいる道は正しいのか?

ノルウェー におけるEV普及に関する記事です。世界でも最も普及している国として、よく紹介されていますが、どうしてそれほど普及したか解説してありますので、今後の日本での普及を考える上で参考になるかと思います。

ノルウェー は、税制上の優遇措置おかげで、EVの先駆者になっている。今日、バッテリー電気自動車が ノルウェー の新車販売の半分以上を占めている。Schalk Cloete氏は、これらのインセンティブがどれほどで、何トンのCO2を減らせるかについて検証している。要するに、主要な石油・ガス輸出国である ノルウェー は、1トンのCO2を避けるために、 EV に与える減税の資金として、100バレル以上の石油(40トンのCO2を排出する)を販売する必要がある。また、 ノルウェー の電力は水力発電のおかげでほぼ完全にクリーンであるが、他の国ではCO2回避コストが高くなる。言い換えれば、ほとんどの国では、 EV の支配を達成するためには同じような取り組みでは達成できない。その方法には多額の補助金が必要あり、ノルウェーに比べて、多くの炭素を排出することになる。したがってCloete氏は、 EV に関する誇大宣伝に対して批判的です。Cloete氏は、車の使用を減らす行動こそが重要であると考えている。それ故、 ノルウェー は、 EV のリーダーではなく、石油とガスを低炭素燃料に変えていくリーダーであるべきと考えている。

巨大な石油とガスの富

私は ノルウェー を愛しているし、天候以外は文句の言いようがない美しい国である。しかしこれは、収益性の高い炭化水素輸出を50年間実施してきたおかげである。公式データによると、次の推定 ノルウェー は、約440億バレルにも上る石油と同量の化石燃料を販売しており、15Giga tonの近くのCO2を排出している。 ノルウェー の生産コストは非常に低いので、23USD/バレルの利益を得ており、利益を累積すると1兆ドルに達する。

他の多くの石油国とは異なり、 ノルウェー はこれらの利益のかなりの部分を賢明に投資してきた。その利益は3,600億ドルに達しており、石油やガスによる累積利益の3分の1に達している。投資の収益率は安定しており、 ノルウェー は現在、約1.3兆ドル相当の石油ファンドを有している。わずか530万人の国にとって、これは驚異的な金額である。アメリカの連邦税収の合計はGDPの16%に達しています。ノルウェーの場合、平均以下の年で、ファンドの投資収益は5%であるが、不労所得として、同国のGDP(約4,000憶ドル)の16%にも達している。更に、GDPの約7%にあたる、継続的な石油及びガス賃料も発生している。

図1 投資資金の変化(USD Billion)

気候変動に対する対応

ノルウェー が、気候変動について何かをしなければならいと圧力を感じていることは驚くべきことではない。そして過去10年間でEVは、 ノルウェー の気候変動に対する輝く光として浮上してきた。Battery EV (“BEV”)は現在、 ノルウェー の新車販売台数の半分以上を占め、世界平均の10倍以上で推移している。この記事では、この驚くべき成長の背後にある秘密について分析している。

図2 ノルウェーにおけるEVシェアの推移

BEV、PHEV、HEVの比較

輸送部門において、排出削減のためにEVの形式には以下の3つがある(自動車形式:BEV, PHEV, HEV, ICE – what on earth do they mean?)。

  • 電力網から受電し、搭載した大型バッテリーパックで動くバッテリー電気自動車( BEV )
  • より小さい電池パックを持ち、必要に応じて内燃機関に切り替えることができるプラグインハイブリッド電気自動車( PHEV )
  • 小型バッテリーと電動モーターを使用して、内燃機関をより頻繁に運転環境下で稼働させることで効率を最適化するハイブリッド電気自動車( HEV )

この比較では、Jevonsのパラドックス(燃費向上は燃料使用量を増加させる傾向がある)に盲目的に従って、SUVに焦点を当てる。

  • フォルクスワーゲンID4(BEV)
  • トヨタRAV4プライム(PHEV)
  • トヨタRAV4ハイブリッド(HEV)

3台のSUVは基本的に同じサイズで、四輪駆動が装備されている。その他の重要な仕様(米国の価格と効率性)は表の通りである。これらの統計を技術に中立な観点から見ると、RAV4は明らかに勝者である。しかしそれはインセンティブを与える前のことである。

 
ID4
Prime
RAV4
Price44,87039,42529,675
Fuel Economy (MPG)3840
Electric Economy (MPGs)9794
Range (Miles)260600570
0-60 time (s)7.65.57.5

ノルウェー で BEV を所有することの利点

第一に、 ノルウェー が BEV を補助していないという点が重要である。代わりに BEV は、通常の車両に課せられるほとんどすべての税金と手数料を払う必要がない。しかし、その免税による政府財政への影響は、 BEV に補助金 (より高い費用) または税金控除 (低所得) を通じてインセンティブを与えるのと同じである。 ノルウェー は、GDPの半分以上に相当する公共支出を賄うために、経済全体で高い税金を必要するが、大規模な BEV 税免除は政府予算に大きな穴をあける。 それでは、ノルウェー の BEV の購入者が利用できるインセンティブを検証する。まず、上記の米国の価格と比較して、 ノルウェー の表に示した3つのモデルの実際の価格は次の通りである。

図3 EV 3モデルのアメリカ及びノルウェーでの価格比較

これを見ると、インセンティブがはっきりとわかる。ID4は、アメリカでは最も高価であったが、 ノルウェー で最も安価となっている。アメリカに対して、 ノルウェー ではID4は12%高く、RAV4ハイブリッドは76%も高価でである。これらの違いが生じているのは、EVは2つの大きな負担を回避しているからである。それらは、25%の付加価値税とCO2排出量に関係している多額の追加税である。

RAV4プライムは、低CO2排出のために大規模な追加税を免除されていおり、ノルウェー におけるPHEV販売を促進する要素となっている。このメリットのおかげで、RAV4プライムは、今年のノルウェーで最も売れている車としての地位を得ている。

EVはまた、いくつかのランニングコストに対するインセンティブの恩恵を受けている。第一に、 ノルウェー のガソリン税は世界で最も高い一方、電気税は非常に安い。結果として得られる燃料費は次のようになる。

図4 年間の燃料費比較

図が示すように、燃料の実際のコストは3台のSUVは同じような値である。これには、ほとんどの人が気づかない。均等に課税されると、 BEV は HEV に比べて燃料コストが変わらない。実際、 ノルウェー が(電気のように)生産価格に近いガソリンを売るとすれば、ハイブリッドの方が安いかもしれない。次に、 BEV はかなり低い通行料と駐車料金という恩恵を得ている。また、保険税も非常に安くなっている。

図5 年間の保険税、

バスレーンで運転し、わずかに低いローン金利を得るような他の特典もある。比較のために、バスレーン運転の年間価値は500ドル(1回の旅行につき約1ドル)、年間100ドルの低金利が期待される。5年間の所有期間にわたってすべてが集計すると図6のようになる。ID4が支払う少額の手数料は、EVが受ける利益で相殺される。合計で、RAV4プライムは23,300ドルの税金を支払うのに対し、RAV4ハイブリッドはさらに36,500ドルを支払うことになる。言い換えれば、 ノルウェー のRAV4のすべての税金やその他の手数料で、米国で余分なRAV4を購入することができる。

図6 5年間におけるランニングコスト

CO2の回避費用

ノルウェー の BEV の最も良い点は、電気がクリーンな水力発電からほぼ供給されることである。これは、従来車と比較して BEV の排出量は、バッテリー製造によるものだけといえる。図7から、80 kWhのバッテリーを備えたID4のような BEV は、電力がクリーンなエネルギーから作られた場合、HEVに比べて、約15トンのCO2が回避でき、PHEVに対しては約6トンのCO2が回避できる。したがって、 ノルウェー においてID4を購入するインセンティブは、RAV4に対して$36,500/15 = $2,400 /ton、RAV4プライムに対して$23,300/6 = $3,900/トンとなる。

ノルウェー がこれらの大規模な減税の資金調達を支援するために販売しなくてはならない1バレルの石油は、CO2約0.43トンを排出する。CO21トンを排出するのを避けるために、$2,400が費用が必要であるが、石油による利益が1バレル23ドルであるので、2400/23=104バレルの販売が必要であり、その石油からは45トンのCO2が排出される(つまり、1トンCOの削減するために、45トンCO2を排出させる石油の販売が必要)。RAV4プライムに対して、3900/23=170バレル、それは73トンCO2を排出させる石油の販売が必要ということになる。これらの数字は、ノルウェー の BEV 革命は、50年間の石油販売による問題点へのたんなるバンドエードでしかない。

図7 CO2の排出量の比較

結局、これって何なのか?

極端な ノルウェー の BEV インセンティブは、新興産業が事業を広げるのを支援する意味があった。しかし、 ノルウェー の BEV 売上のシェアは、世界の他の地域に比べて重要ではない。おそらくその重要性とは、国家の誇りに関するものである。 ノルウェー は ネットゼロ に到達した最初の国になりたいと考えている。しかし、 ノルウェー は世界のCO2のわずか0.1%を排出するでしかなく、輸送からくる排出量は、更にこの小さいな値の3分の1でしかない。はるかに重要なのは、石油・ガス輸出であり、 ノルウェー が排出するCO2の約15倍の排出につながっている。これに関する最も合理的な説明は、 ノルウェー がEVに関する社会実験を実施したということである。では、これまで使った数十億ドルの実験から何を学んだのか。考えられる限り、以下の3つの調査結果を挙げられる。

  • BEV の過半数のシェアに到達するには、ほとんど国ではできないほどに資金的に余裕があり、(たとえ100%が再エネだとしても)多額の資金によってCO2排出を回避するインセンティブを与える必要がある。
  • 車両価格とともに上昇し続ける BEV インセンティブは、2.5トンの高級SUVの販売を大幅に増加させる。
  • 十分なインセンティブと水力発電により、都市交通システムで車が担う役割は、炭素制約のある世界であっても無期限に続く。

1つ目は有用であるが、2つめや3つめは残念な結果である。2つ目に関して、金持ちが高級車を輸入するための大規模なインセンティブは、この BEV の普及に関する腹正しい点である。3つ目について、都市部での移動のために個人が車に依存することは、私たちの社会の中で最も無駄で不健康な要素の一つである。


もちろん、 BEV の普及は、ガソリン車を買いたくないほど安くなるということである。さて、バッテリーパックの価格は現在1kwhあたり約140ドルである。それが半分になれば、ID4の価格(20%の利益率を含む)から6,500ドル下がる。しかしそれは、ID4が ノルウェー のRAV4に対して享受する巨大なインセンティブのわずか18%である。事実、 ノルウェー 人は BEV をはるかに安価なオプションにするインセンティブにもかかわらず、今だPHEV、HEV、および通常のガソリン車とディーゼル車を購入している。例えばID4 は、5 年間の所有期間(減価償却費、保険額、利息金額が購入コストの 70% と仮定)で RAV4 モデルよりも 15,000 ~ 19,100 ドル安くなる。裕福なノルウェー人にとっても、それは可処分所得のかなりの割合である。 ノルウェー では、現在約50種類の BEV と50種類の PHEV が販売されているが、 HEV モデルは10種類しかない。したがって、在庫状況調整済みの売上を見ると、 BEV は PHEV の約2倍の人気があり、 HEV にも同様に人気があります。

図8 ノルウェーの自動車の割合

BEVの移動範囲に関する不安

これは、車の所有者がいかに自由を大切にしているかを示表している。より大きなバッテリーパックとより速い充電器にもかかわらず、 BEV によって提供される自由は限定されている。RAV4ハイブリッドは、500〜600マイルの範囲を持ち、どこでも5分で補充することができます。しかし、ID4はもう少し複雑である。

  • 混合条件での移動範囲は、260マイルと評価されている。都市での使用は、さらに広い移動範囲となる。
  • 高速道路の運転の場合、移動範囲は190マイルに落ちる可能性がある。
  • 氷点下の場合は、160マイルとなる。非常に寒い(または非常に暑い)日はさらに悪化する可能性がある。
  • バッテリーの劣化で数年後、おそらくこれは約140マイルに下がる。
  • ロードトリップでは、限界まで行くのは危険すぎるので、充電する前に寒い日や暑い日には約120マイルしか運転できない。
  • 充電時には、妥当な時間で80%に達することができるが、フル充電を得るには時間がかかりすぎて、実用的な移動範囲は小さくなる。
  • 高度な運転支援技術により安全に高速道路の制限速度が上がれば、これらの制限はさらに厳しくなる。

ガソリンと同じだけの移動範囲を達成するには、ID4が搭載しているよりもはるかに大きなバッテリーパックが必要である(はるかに高速な充電器と組み合わせて)。これまで以上に大きなバッテリーとより速い充電器の需要により、コストの提言には限界がある。一方で、HEVはさらなるコスト削減と効率とパフォーマンスの向上の余地を持っており、競争がますます厳しくなる。

考察

最近はバッテリー技術の進展、またコストの低下により、 EV の普及の兆しが見えてきています。ここで記載されています ノルウェー は先進的なモデルとして有名であり、またヨーロッパ各地でその売り上げを挙げてきています。特に テスラ は人気でありノルウェー では人気がありすぎて、クレームが増えている状況です

またこの記事にも記載がありましたが、有数の水力大国であり、電力の大手 Statcraft が ノルウェー 国内の多くの 水力発電所 を有しています。。また、石油及びガス採掘、近年では風力に力を入れているエネルギー大手 Equinor があります。最近では両者とも 風力 発電事業にも力を入れています。

一方、EVを広げるにはインセンティブが必要であり、その補助金を出すために、化石燃料を売らなくてはならないノルウェーの矛盾を皮肉っています。特に結論において:

ノルウェー が、世界のために真の善をしたいと思うなら、炭化水素輸出の脱炭素化に全力を尽くすべきではないか。このような取り組みは、石油・ガス輸出業者のために、新しい基準を設定することになり、痛みを伴うが、低炭素燃料を必要とする世界では非常に有益である。

世界の流れはEVですが、HEVや従来のガソリン車は、本当になくなっていくのでしょうか。

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Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など