調達管理

プロジェクトファイナンス 組成に必要となる関連契約書類

プロジェクトファイナンスに必要な関連書類

概説

プロジェクトファイナンス において、リスクを関係者に配分するために、非常に多くの契約書を作成する必要があります。図1は東南アジアにおけるプロジェクトにおける主要な当事者間で結ばれる契約書の関係性を示しており、表1はその主要な契約書の概要を記載したものとなります。契約書には、融資対象事業に関連する契約書(1,2,3,4,5)と融資に関連する契約書、いわゆる融資契約(6,7)に分けることができます。個別については、ブログ内にて詳細を記載しているのもありますので、そうした場合はそれを参照できるように、リンクを記載するようにいたします。

図1 プロジェクトファイナンス における当事者間の関係図

No.
名称
当事者
概要
1株主間協定書スポンサープロジェクト運営に関連する事項をスポンサー間で規定。
2売電契約プロジェクト会社、オフテイカープロジェクト会社とオフテイカー間での電力売買に関する条件を規定。
3-1譲渡契約プロジェクト会社、政府プロジェクト会社の権利と義務を規定している。
3-2政府保証売電契約や譲渡契約上のオフテイカーの義務を政府が保証している。
4建設契約プロジェクト会社、コントラクタープロジェクト会社とコントラクター間でプラントの建設工事に係る条件を規定している。
5操業・保守契約プロジェクト会社、OMベンダープロジェクト会社とOMベンダーとの間でプラントの運転や保守業務の内容を規定してる。
6-1Common Terms Agreementプロジェクト会社、レンダー全ローンに共通する貸出先行要件、Rep&Warra、Covenants、デフォルトなどを規定している。
6-2Facility Agreementプロジェクト会社、各銀行各銀行の融資金額・条件(期間、金利、各種手数料など)、貸出・改修方法等を規定している。
6-3Inter-creditor Agreementレンダーレンダー間での意思決定方法や役割などを規定している。
7Security Documentsプロジェクト会社、保証会社プロジェクト会社が保有する総資産、総収入、関連する諸契約上の権利に関して、担保の設定内容などを規定している。

1. 株主間協定( Shareholder’s Agreement )

プロジェクトファイナンス では、特定事業、ここでは再エネ電源による電力事業を、プロジェクトに特化した会社(Special Purpose Company:プロジェクト会社)により実施します。株主間協定とは、プロジェクト会社に出資を行うために、スポンサー間での役割や義務を規定する契約書であり、合弁契約(Joint Venture Agreement)ということもあります。

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特に利益相反になる企業がスポンサーにいる場合、つまりコントラクターがプロジェクト会社のスポンサーであることが、再エネプロジェクトでは見受けられます。そうした場合、そのスポンサーは議決権が制限されるようにしなくてはなりません。そうした利益相反による問題事例として、ラオスのセピアン・セナムノイダムによる事故は典型例としてあり、同様なことがないように注意を払う必要があります。スポンサーにコントラクターとなる会社を加えることは、プロジェクトを複雑化する要因になるので慎重な検証が必要です。

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2. 売電契約( Power Purchase Agreement )

売電契約( Power Purchase Agreement )は、プロジェクト会社とオフテイカーとの間で結ばれる売電価格や条件などを規定する契約で、 プロジェクトファイナンス にて資金調達する場合、返済期間の収入確保の蓋然性を示す上で重要な契約の内の一つとなります。

特に東南アジアの国では、オフテイカーが国、もしくはそれに準じる電力会社が多く、その債務は政府のソブリンと一致しているために、 プロジェクトファイナンス を組成する場合、政府保証が必須となることも多くなります。つまり、売電料金支払等のオフテイカーによる財務的義務の履行をその国の政府に保証してもらうというものです。国が株式を一部有しているような民営化された電力会社に対する保証については、MIGAやNEXIなど、政府系や国際金融系の保険にてカバーすることもありますが、そうでない発展途上国で行うIPPプロジェクトでは、政府保証と売電契約はセットとなることが一般的です。

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3. 政府契約

3-1. 譲渡契約( Concession Agreement )

概要

再エネ開発はリードタイムが長く、初期の可能性調査(Feasibility Study; FS)において、地質や自然災害リスク、環境・社会リスクなど、その見極めにきわめて時間がかかることが多いです。常にテーラーメイドであるため、事業採算性とリスクの観点から開発スキームを検討し、多額の資金を事前に投資する必要があります。先進国では、こうした一連の流れを全て整えた上で事業者入札を行うこともありますが、一般的には、プロジェクトを見つけた事業者がリスクをとって先行投資を行って、FSを行うことが多いです。

このため、FS実施及びその後の事業権付与に至る過程には数年を要することもあり、その期間において排他的に開発調査、政府や地元との交渉が実施できなければ、事業者として安定して時間と費用をかけて進めることができません。そのため、東南アジアなどにおける再エネ開発では、政府が事業者に対して独占開発権を取り交わして調査を行い、その後に事業性を見通せた段階で、事業権を付与するという仕組みがあります。この事業権を付与する契約が譲渡契約( Concession Agreement )となります。譲渡契約では、事業に必要となる基本的な権利を事業会社に与える一方、当該国に支払う補償や税金なども定め、プロジェクトの運用ガイドラインとなります。

事業会社の権利

基本的な権利として、水力であれば水利権、土地所有・リース権、その他の許認可にかかる権利、事業者及び政府の権利と義務、納税等にかかる優遇措置などとなります。

水力の場合は水利権の確保はもっとも重要な事項の一つとなります。水は水力にとっては燃料にあたり、プロジェクトが適切な収益性を得るためには必要となる最大使用量を上限として河川から取水できる権利が得られなければ事業は成り立ちません。取水量に関しては、河川の生態系、水上輸送、景観等を配慮したうえで、上流及び下流の権利を確認していくことが重要になります。下流に関しては、維持流量として、発電もしくはゲート放流によって常時放流すべき水の量が定められるのが一般的です。IFCやその他の国際機関でも基準は出しており、そうしたものを参考に定められます。こうした規定事項は、FSもしくは環境影響調査の中で検討され、詳細が決定されていきます。

事業実施に必要になる土地取得及びリースに関しては、国によって制度が大きくことなります。例えば、ラオスやミャンマーでは原則国有であり、個人や法人ともに国有地に使用権を設定するのが一般的になっています。ただ、土地の権利は多くの国でもめることも多く、また登記のシステムがないことが多いため、現状もどの国も法整備、変更していくことが多いです。発電事業においても、発電所や変電所、送電線などに対して排他的な使用権、もしくは第三者の利用も認める使用権などを、CAの一部として、Kand Lease Agreementにより詳細を定めるなどが行われます。もちろん、ここで権利設定にあたっては、既存の住居者や建物の所有者などに対して、補償なども行う必要があり、その額等について、政府とのコミュニケーションはもちろん、環境影響調査の一環として、Resettlement Action Planとして、検討・決定が行われるのが一般的となります。

電力事業は広範囲で許可が必要となることが多く、①事業会社にかんするもの、②工事に関するもの、③水や土地利用にかんするもの、④環境社会に関連するもの、⑤資金調達にかかわるものといった許可が必要となってきます。個別で法律で定められている場合もありますが、電力事業にとった細則は定められていない場合も多く、それをカバーする意味で、こうした譲渡契約で定めることがあります。

当該国への補償

当該国への補償として、ロイヤリティーの支払いと税金があります。事業のキャッシュフローからロイヤリティーと税金の支払いがキャッシュフローにどのように影響を与えるか、支払い金利に対する源泉徴収税があれば、それがどのような影響があるか、などを考慮して、事業会社のリターンを見ながら、交渉によりそれぞれの値が定められます。

場合によっては、当該国も資本参加を希望することも多く、その場合はキャッシュフローの蓋然性にも影響があるため、レンダーは非常に神経質になることが多いです。つまり当該国の協力な支援を受ける可能性がある一方で、事業会社の運営に政治的な影響が及びかねないからです。

事業を実施する際に、地元の雇用を優先することを規定されることもあります。過度な規制がある場合、プロジェクトの進捗や運営に影響を与えかねず、安易に受け入れることはプロジェクトの成功に影響を与えかねません。

3-2. 政府保証

政府保証では、売電契約に定められた支払い債務をオフテイカーにかわって補償したり、譲渡契約で定められた政府の義務を補償するものとなります。前者はPPAの中で詳細を述べていますが、後者については、例えば、保険ではカバーできない戦争、テロ、内乱、法制度変更。許認可変更などのポリティカルリスクに関する補償も含まれます。

例えば、建設中の発電所がテロの被害を受けて資材調達ができなくなり、当初予定通りに完工できなかった場合、予定日に商業運転が開始できたものとみなして、同日以降に売電契約に定める一定の電気料金をオフテイカーが支払う、政治的な理由で契約が解除された場合、プロジェクト会社に違約金が支払われるなど、民間の保険等ではカバーしきれない事象を当該政府が保証するというものです。

また天災などについても、プロジェクトの建設や操業の続行が困難となった場合、水文リスクや甚大な自然災害については、一定の猶予などを与えるというものもあります。

こうした政府保証が付くのは、東南アジアなどの途上国において、オフテイカーが政府もしくは政府系の企業であり、国とほぼ一体であるためであり、逆にこうした状況で プロジェクトファイナンス を組成する場合は、政府保証がなく、収入の蓋然性がレンダーから納得されないという背景があるものです。

4. 建設契約

プロジェクト会社とコントラクターとの間で建設工事に関する条件を詳細に規定する契約となります。再エネ事業において、建設費用を事業費用の多くを占めるものであり、いかに適切な額で、品質を保ちつつ、予定通り工事を終えるかが最重要課題といえ、法律家だけではなく、エンジニアも内容を理解したうえで作り上げたいく必要がある契約となります。ブログにおいても、最も重視している契約であり、他の契約に比べて詳細にデータベース化しています。

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5. 操業・保守契約

プロジェクト会社と操業・保守会社(OMベンダー)との間で発電所の運転や保守業務の詳細について規定している契約。発電プロジェクトにおいては、どのように運転や保守を行うかは異なっています。

日本の旧一電力のように会社自身で運転や保守を行う場合もあれば、プロジェクト会社が第三者のOMベンダーを起用して発電事業を行う、またそれらのハイブリッドと事業会社の形態やスポンサー会社のノウハウによって、その形態は変わってきます。コントラクターに対して、保守の一部を長期保守支援契約を締結する場合もあり、これによりスペアパーツの確保や技術者の確保を目指します。

そうとは言え、OMベンダーやコントラクターなどの第三者に委託する場合には、操業・保守契約のなかでオペレーターが従うべき基準、操業・保守の手数料、関連支出の扱い、解約手続き、双方の責任などの明確が規定が求められます。

6. 融資関連契約

レンダーとプロジェクト会社との間で締結するものであり、通常はシンジケートローンとして共通する事項をまとめて規定したCommon Terms Agreement(6-1)、各金融機関ごとに固有の条件を規定したFacility Agreement(6-2)、銀行間の意思決定や役割分担を記載したInter-creditor Agreement(6-3)があります。また借入人が保有する総資産、総収入及び関連契約上の権利について担保等を設定する契約であるSecurity Documents(7)があり、レンダーがSecurity Trusteeを指名し、そのSecurity Trusteeと借入人との間で締結がなされます。レンダー間の関係は、6-1や6-3で決められ、レンダー間の連絡方法、役割や権限、意思決定方法、Events of Defaultの際の手続き、回収資金の分配方法などが定められます。

これ以外にも、下記の表に示すような契約もあり、各契約文書の交渉には、同時並行で行われ、各ポジション及び合意を意識しながら、交渉を進めていく必要があります。

以下でCommon Terms Agreementのうち、契約の主要項目に関して、詳述していきます。

関連契約
内容
Equity Contribution Agreementスポンサーの出資義務や保証義務などを規定する。スポンサー企業に関連する事項であり、スポンサー企業にとって、非常に重要な契約となる。
内容としては、出資額の上限、保証額の上限、保証が発生する条件、金銭以外でスポンサーが保証すべき内容などがある。
Account Agreementプロジェクトで使用する口座の詳細を規定する。
Direct Agreementレンダーが、主要なプロジェクト関係者(コントラクター、政府など)との間で、事故などが生じた場合のレンダーの権利を確保するための契約。
交渉は、レンダーとその関係者が行う。プロジェクトファイナンス特有で、あまり経験のない関係者もいる。
レンダーが示す条件であるものの、わかる範囲で関係者には事前に示しておくべきである。プロジェクトファイナンスでは必須であるため、プロジェクト関係者が拒否すると、組成できなくなる。

貸出先行要件(Conditions Precedent :”CP”)

融資に関連する契約を締結したのち、一定の期間までに(その多くは初回の貸し出しまで)、借入人が充足しなければならない要件を、CP、貸出先行要件となります。CPは基本的にはレンダーの債権の保全を目的としており、CPを満たすか、レンダーとの交渉によりレンダーが権利放棄(Waiver)すれば、ローンの貸し出しが開始されます。Waiverについては、事業実施中にも、レンダーと交渉により借入人が必要となることもあります。主な条件は以下の通りです。

  • 関連する融資関連契約の手続きの完了(署名など)
  • 各契約のCPが充足されているという証拠
  • 各関係者弁護士の法律意見書(Legal Opinion)、政府が絡む場合は、法務省のLegal Opinionも必須
  • レンダー側のアドバイザーの報告書
  • 保険付保が完了していることを示す証拠
  • 口座の設置完了の証拠
  • 出資金が振り込まれ、プロジェクトコストにのみ充足さらたことに関する会計監査による証明
  • 必要な政府の許可
  • 必要な支払いを終えている証拠

表示と補償(Representations and Warranties)

融資契約を調印するにあたり、レンダーが融資判断を行うにあたっての前提条件として、融資関連契約が真実であることが挙げられます。借入人はこれについて表明する必要があります。これをRepresentations and Warrantiesといい、融資契約に限らず、他の契約でも同様です。これについては、調印時だけではなく、CP充足時、貸出時にも繰り返し表明が求められます。表明事項として主なものは以下の通りとなります。

  • 適正に設立、組織されており、所在国の法律のもと有効に存在している、資産を保有する能力を有している|例えば、特別目的会社の要員の役割を含めて、レンダーには組織を提出するのですが、その要因が欠員になった場合、これは不履行となります。再エネでは特に、環境関連に関して、レンダーは敏感になることがよくあり、要員に欠員がでただけでも、貸出を止められることはあります。
  • プロジェクトに関連する契約を締結する権限を有している
  • 契約書が有効に成立している、法的拘束力をもつ義務の執行が可能である
  • プロジェクトに関連する契約が適正で不備がなく正確な内容である
  • 契約上の権利の行使が法律に反していない、法令を遵守している
  • 必要な許可が取得され、有効である
  • Events of Defaultが生じていない
  • 重大な係争状態にない
  • プロジェクトに必要な資産を有し、アクセス権を有している
  • プロジェクト以外の事業を行っていない|プロジェクトファイナンスでは、その資金の使い道を厳しくチェックされます。その資金の使い道がどこかという意味での条件となります。
  • プロジェクト以外の負債がない、発生していない
  • 借入人が合併、統合ないし解散の状況ではない
  • 保険契約が有効である
  • 環境関連でプロジェクトに重大な影響を及ぼしかねない事象がない|自然社会環境に関しては、Environment and Social Impact Assessmentの中で詳細に調査、対策を検討する必要があり、その中で、事業者の義務を規定することになります。これが環境に関する遵守すべき項目となり、違反がないか、常に監視、是正が求められます。再エネプロジェクトでは特に、この点が重要であり、特別な専門のチームをつくり、対応にあたることになります。違反事項が見つかり、是正が認められない場合は、重大な違反として、貸出の停止が起こります。
  • 会計原則に基づいて、財務諸表が作成、提出される
  • 役人等への賄賂が行われていない
  • 担保権が有効である

誓約(Covenants)

融資期間中に借入人が守らなくてはならない義務を融資契約の中で誓約させるのがCovenentsとなります。大きくわけて、借入人が行わなければならないAffirmative Covenentsと行ってはならないNevative Covenantsがあります。また情報提供を行う必要があるInformation Covenantsがあり、それぞれ以下の通りとなります。

Affirmative Covenants

  • 自らの存続と権利の維持のために必要な全ての行為を行う
  • 貸し出された資金は融資契約で記載された目的のために使用する
  • 法令を遵守する
  • 税金を支払う
  • 各種口座を維持・管理する
  • プロジェクトに関連する文書に沿って、設計、建設、操業を行う
  • レンダーの担保権を保持する
  • 債務の支払いに関し、無担保負債への支払いとパリパス条項を確保する
  • 当初定めた予算に従ってプロジェクトを遂行する
  • スペアパーツを適正に確保する
  • レンダーの各アドバイザーの監査、現場立ち入りを認める

Negative Covenants

  • プロジェクト以外の事業に従事しない
  • 許可されていない負債は負わない
  • 許可されていない留置権(先取特権)(Lien)以外は担保権の設定は行ってはならない
  • 合併や統合は進めない
  • 例外を除き資産の一部または全部を処分してはならない
  • 融資契約に規定されている以外の投資はしてはならない
  • 下記の条件を満たさない限り配当を行ってはならない
    -プロジェクトの完工
    -第一回元本償還
    -Debt Service Coverage Ratioのテストを達成
    -Debt Service Reserve Accountに所定以上のキャッシュがある
    -Events of Defaultが発生していない
  • プロジェクトに関する文書や政府保証が変更、権利放棄、取り消し、解約などがなされていない
  • 一定額以上の係争や訴訟の処理を行わない
  • 一部の例外を除き、融資及び債務保証はしてはならない
  • 予算で認められている以上の支出はしてはならない|プロジェクトファイナンスでは、キャッシュフローのキャップが決められるために、工事を出来高払いで支払うことはできません。そのため、建設契約において、Milestoneベースで支払うという規定は必要となります。
  • 贈収賄には関わらない
  • 株式を処分してはならない
  • 規定されている以外の口座を開設してはならない

Information Covenants

  • 財務諸表を提出する
  • プロジェクトの関連する契約に規定された報告書のコピーないし融資契約で規定された報告書を提出する
  • プロジェクトの関連する契約に規定された通知を行う
  • 政府承認等に変更があった場合に通知する
  • 操業・保守関連予算を提出する
  • レンダーから要求された情報を提供する

債務不履行事由(Events of Default)

債務不履行になると、レンダーより即時全額返済を求めらえることもあります。通常、このような場合はプロジェクトの続行が不可能となりますが、セキュリティーパッケージにより債権保全を確保しています。債務不履行が起こった場合、まずは免除の適否(Waivorの実行)に関してレンダー間で意思決定が行われます。ここでWaivorを行わいと決定された場合、次にプロジェクトを継続するかどうかが話し合われ、続行せずに、救済(remedy)となった場合、借入人に通知を発出したのちに、貸出実行の停止、融資コミットのキャンセル、債券の残額返済、口座からの引き出し停止、スポンサーの未払い実施指示、担保権の実行(Foreclosure)となります。

担保権の実行については、国によって手続きが異なるため、現地法律事務所の知見が不可欠となります。仮に英米法のもとで手続きを進める場合、債権者は債務者に対して不払い金額を記載した通知を提示し、一定期間経過後も不払いが解消しないと担保権が設定されている資産が債権者に移転されて、競売により売却になります。担保権について、英法では当該資産を占有していればよく、担保権を設定してなくても問題ありません。米法の場合は設定も必要となります。

以下の債務不履行となる条件について記載します。

  • 融資契約上の支払い義務が発生している金額に対して不払いが発生している
  • Representations and Warrantiesに重大な間違いがある
  • Covenants違反が発生している
  • 倒産ないし破産している
  • 融資契約以外の債務に対して不払いが生じている
  • プロジェクトに関連する契約に重大な違反、変更、解約が生じている
  • プロジェクトに影響を与える政府承認が発出、更新、変更、取り消しがなされている
  • プロジェクトに関連する契約書に係れている義務の履行が、違法となされている
  • 保険が失効している
  • 融資契約が否認もしくは執行不可能となっている
  • プロジェクトの全体もしくは重要な部分が国有化されている
  • プロジェクトの全体もしくは重要な部分に損害を受けている
  • 建設もしくは操業が中止されている
  • プロジェクトが一定の期間になっても完工していない
  • コストオーバーランにより完工に必要な資金を調達できない
  • DSCRテストを達成できない
  • プロジェクトに重大な影響を与える事象が生じている
  • スポンサーによる借入人株式譲渡制限の違反が発生している
ABOUT ME
Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など