記事:2021月2月17日 Financial Times ”Total chief warns of renewable energy bubble”
記事によると仏石油大手 トタル のプヤネCEOが英Financial Times紙とのインタビューで 再エネ のバルブ状況について警鐘を鳴らした。要点として:
- 再エネ 事業において、収益の25倍まで事業額を評価するのは異常な高値。
- 銀行が石油会社をあおって、 再エネ に対して高値入札をさせようとしている。
- 2月初めに英国で実施された6件の洋上風力発電プロジェクトの事業者選定で、これまでにない高値落札がされたが、多くが石油会社である。
その原因は、石油・ガス大手企業に対して 再エネ へのシフトを求める投資家からの圧力が強まる中で、一定以上の規模の 再エネ 資産がまだ少なすぎることにあると分析している。
こうした高額での応札を積極的に進める英同業 BP などの姿勢を間接的に批判し、 トタル としては法外な入札を行うつもりはないと言明した。上述した 風力 入札に関して、 トタル も1件を落札したが、最高額を提示したのは BP が参加するコンソーシアムだった。インタビューの中で、 プヤネ CEOは暗に BP を皮肉っている。
トタル も1月中にインドのアダニ・グループから 再エネ 子会社アダニ・グリーン・エナジー(AGEL)の20%を取得し、これに25億ドルを投資した。しかし、CEOはこれがおそらくは2021年中の唯一の大型買収になると予告。今後はより小規模な再エネ 資産の取得に集中する方針を表明している。
BP は炭化水素の生産を40%削減することを計画しているが、この点でも プヤネ CEOの方針は異なり、 再エネ 事業に投資するためには石油・ガス事業で十分な資金を稼ぎだすことが不可欠だとし、双方の事業のバランスを保つことを重視している。 トタル は2021年に20億ドルを電力・クリーンエネルギー事業に投資する予定で、10%の投資リターンを見込んでいる。また2025年には 再エネ 事業で15億ドルのキャッシュフローを生み出すことを目指す。これは2019年の1億ドルと比べて大幅な増加だが、2019年に主に従来型事業により生み出したキャッシュフローの総額(270億ドル)と比べて微々たるものに過ぎず、石油・ガス事業の比重の大きさが分かる。 再エネ 事業は石油・ガス事業がもたらす資金力を今後も必要とするとの考えに基づいて、 再エネ 事業を分離する構想を拒否している。
再エネ の将来性を確信しているものの、現在のバブルを招いている政治家や環境団体の 再エネ 推進に関する発言には、価格などの現実を無視した不用意な面があると批判した。
考察
アメリカの パリ協定 復帰や日本の カーボンニュートラル 宣言など、 再エネ へのシフトが鮮明である一方で、日本、イギリス、アメリカのテキサス(関連記事)などで電力価格が高騰、電力の自由市場の脆弱性や 再エネ が危機時の供給力に貢献しなかったことが明らかになりつつあります。エネルギー構成を 再エネ へ安易にシフトすると、エネルギーセキュリティー上、危機に瀕する可能性があります。
更に、 再エネ 投資がバルブ傾向であり、投資単価が上昇する、採算性の低い案件に投資するなども出てきています。
プヤネ CEOがインタビューの中で指摘していますように、化石燃料への風当たりは強いものの、 BP 、 シェル 、 トタル などの大手が石油・ガス事業を売却しても、中東やロシアの競合事業者が買収して生産を続けるだけなので、石油・ガス事業全体の規模には変化はないと指摘しています。実際、 ウォーレンバフェット 氏は、石油大手シェブロンの株を買い増ししていますし、インタビューにあるように、 トタル の場合であれば、石化燃料ビジネスが270億ドルのキャッシュに対して、再エネは15億ドルにすぎません。つまり、石化燃料がゼロになることは当面見込むことはできません。
日本としても、プロパガンダ的な流れにのるのではなく、エネルギーバランスを十分に考慮しなければ、国力を弱めかねないことを意識すべきです。