記事:Irish Times, 2021/4/5, “Greenpeace warns European Commission on nuclear energy classification”
記事によると、 Greenpeace Europe は、 欧州連合(”EU”) が持続可能と判断する活動のリスト、 EU タクソノミー に、 原子力 発電 を加えることに対して、 欧州委員会 に警告している。
この声明は、 委員会 の科学専門家グループである 共同研究センター ( JRC )が、温室効果ガス排出量をヨーロッパにおいて2050年までに実質ゼロにするという点で、 グリーン投資 のもと、 原子力 は持続可能であるとみなすことができると結論付けた後に発せられた。
Greenpeace Europe の政策アドバイザーのSilvia Pastorelli氏は、「 原子力 産業が巨額な資金調達しなければ立ち行かなくなることはますます明らかであり、 原子力 発電は高額で新しいプロジェクトが消えていっているために、EUの支援を必死に求めている」と述べている。
報告書の中で、「 JRC は 原子力 発電運用の改革に危険なほどに楽観的である。核廃棄物に係る持続不可能な危険をもってして、技術として採用しないには十分な理由であると、第三者科学者たちは、 EU にすでに語った。」と述べている。
「死にかけている産業に重要な資金を使うのではなく、 欧州委員会 は、核、ガス、バイオマスのような本当の解決にはならないものを除き、気候変動に本当に解決となるのもに集中すべき。」とSilvia Pastorelli氏は提案した。
2020年3月、 委員会 が設立した 持続可能 な金融に関する技術専門家グループは、 原子力 を「 EUタクソノミー 」から除外することを勧告した。 EUタクソノミー とは、低炭素および過渡的な経済活動に資金を呼び寄せるヨーロッパにおける制度のことである。
しかし Greenpeace Europe は、 原子力 発電を推進する利害関係者による激しいロビー活動により、 欧州委員会 は JRC に「 原子力 には重大な環境への害があるわけではない。」と評価するよう求めたと指摘し、 EU が持続可能とみなされる活動のリストに関するセクターの復活への道を開いたと主張した。
環境NGOによると、 JRC とユーラトム条約との構造的なつながり、 原子力 産業との関係、 原子力 エネルギーに関するメンバーの公に表明された見解は、「 JRC が 原子力 の持続可能性を客観的に評価できるか疑問である。」と指摘している。
また同NGOは、「 欧州委員会 は、この研究を公平な機関に委ね、市民社会を巻き込むべきであった。2つの専門委員会は、委員会が最終決定を下す前に、それはロイターにリークされたが、 JRC の調査結果を3ヶ月間精査します。」と述べている。
課題調査
気候中立性を達成するには、CO2だけでなく、他のGreen House Gas排出量も2050年までに対応する必要があるが、「すべての人のためのクリーンプラネット」戦略に定められており、欧州のグリーン協定によって確認されている。
こうした対応を促進するためには、経済活動が環境的に持続可能であると考えられる企業や投資家を適切に定義したうえで、 持続可能 な投資を促進するための枠組みを確立することが必要である。
原子力 ・技術に関する幅広い技術力を踏まえ、この分析を行い、高レベル放射性廃棄物や使用済み核燃料の長期管理を含む 原子力 エネルギーの「重大な被害を及ぼさない」かという観点に関する技術評価報告書を作成するよう求められた。
世界の 原子力 産業を代表する世界 原子力 協会のSama Bilbao y Leon事務局長は、「 JRC の報告書は結論で明らかだ。持続可能な金融分類から 原子力 エネルギーを排除することを支持する科学的議論はない。」
「 JRC 報告書は、残りの2つの専門家グループによって、できるだけ早く照査されなくてはならない。一方我々は、プロセスの透明性を確保するために、分類に 原子力 を含めるためのプロセスとタイムラインを設定するのを遅らせないように 欧州委員会 に要請する」と付け加えた。
「我々は、パンデミックの後の経済回復と気候変動という二つの課題に直面している。これまで多くの時間が費やされてきた。 EU において、最も大きな低炭素電力源である原子力は、過去40年以上にわたり、24時間365日信頼性が高く、費用対効果の高い持続可能な電源として大きな役割を果たしており、持続可能な明日を構築する上で極めて重要だ。」と、Sama Bilbao y Leon氏は述べている。
考察
Greenpeace や環境NGOから批判を受ける前に、フランス政府や 原子力 を推進する東ヨーロッパ諸国より、 欧州委員会 に対して要望書が提出されています。フランスの戦略は、EDFとの改革とも関連しており、ドイツ、オーストリアなどの国とは、EU内においても戦略がことなります。
また別の記事では、 フランス が東側ヨーロッパ国に 原子力 を依存、 更に 天然ガス 依存が高まることに危機感を示しています。特に、ウクライナ問題がエネルギーセキュリティー上重要であり、このまま 原子力 発電がヨーロッパ西国で衰退した場合、ロシアの影響力が排除できないリスクに危機感を抱いています。
一方ドイツなども、 天然ガス を用いた火力がなくては、主力電源である風力などの 再エネ の不足を補うことができないために、 天然ガス 火力を EUタクソノミー の傘に入れようとしている事実も見逃せません。
このように各国の思惑が絡んでいる 税制政策 について、アメリカは当初から異議を唱えています。
日本も国益を考え、うまく立ち回る戦略を立てないと、ゲームルールで最初から負けが確定しかねない点は忘れてはなりません。
また JRC 報告書に関する報道記事を別途、電気事業連合会が掲載しています。