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プロジェクトマネジメント を学ぶ・実践するためにおすすめする本【2022年度】

プロジェクトマネジメント に参考になる本とは?

はじめに

プロジェクトマネジメント を学ぶ際、最初に勉強すべきはやはりPMBOKだと思います。

PMBOKは、2021年に第7版が出版され、これまでプロセスを重視してきた流れをくむ第6版とは大きくことなたものとなっています。ただ、第7版は原理・原則論を記載し、実質的には第6版の内容も包含するともいえるため(ウォーターフォール型もアジャイル型も手法の一つ)、第6版の内容を学ぶことも必要ともいえると思います。第6版はウォーターフォール型のプロジェクトを対象となっているため、時間軸も長い再エネ開発には、なじみやすいともいえると考えています。

PMBOK Guide第7版とこれまでとの違いとは?昨年発行された PMBOK 第7版。これまでの PMBOK とは構成も内容も大きく異なることから、関連文献や情報が出されています。そうした情報も参考に、PMBOK 第6版と第7版の違いについてまとめました。...

PMBOKに書かれている手法や概念を学んでいくには、実践による経験から学ぶのはもちろんですが、それに関連する書籍を通しても知識やスキルを学ぶことができます。一方で、 プロジェクトマネジメント に関する本は多数出版されているうえ、初歩的すぎたり、専門的過ぎたりする本もあります。つまり、そうした本を選択する際には、1.どのようなレベルの本を読みたいのか、2.どのような切り口の知識を得たいのかによって、読むべき本が変わってくると思います。

プロジェクトマネジメント の本を読む際のポイント

プロジェクトマネジメント を学ぶために本を読む際に重視したい点があります。
まず、何を学びたいか目的意識をもって、興味ある部分を中心に読んでいくことです。ここで取り上げている本は、物語的に書かれているものもありますが、解説本、いわゆるビジネス本もあります。そうした本については、全て同じように読むのではなく、知りたいこと、もう少し深く知りたいことを中心に読むとよいと思います。
次に基本は多読、多読した本のうち、是非とも身に着けたいと考える本については精読するのがよいと思います。ここで取り上げるおすすめの本は分野毎、かつその分野でおすすめなものを取り上げているものもありますので、そうしたものは精読でもよいと思いますが、理解を促進するという意味では、一定量の多読は必要かと思います。
最後は、その知識を実践で使ってみるというものです。ここで取り上げている本の多くは、すぐにでも実践につかえる知識やスキルが載っていますので、さっそく使っていただき、その経験を本に書き込み、PCDAを回してもらうと非常に効果的だと思います。

ここで紹介する本は、PMBOKの第6版の プロジェクトマネジメント の知識体系に沿った項目で分け、各本の紹介文に、どういった層をターゲットにしたものかを記載しています。共通層としては、再エネ開発プロジェクトに携わる方々で、特にプロジェクトマネジャー、もしくはそれを目指している方としています。そうした層のうち、初級よりもやや上の層の方々を対象とした本を中心に紹介いたします。随時、更新及び変更しますので、その点はご了承ください。

再エネ開発で プロジェクトマネジメント に関わる人におすすめの本

PMBOK

PMBOKを最初から学ぶのは少し難しい部分もあるため、各社からいくつか解説書が販売されています。そのほとんどは初めてPMBOKに触れる人向けの本であるため、PMPを持っている方や、これから取得するために学んでいる方には不要だと思います。ただここで紹介しているPMP向けの問題集については、PMPの取得も目指す上級者向けですのでご注意ください。

「プロジェクトマネジメント」実践講座

ポイント図解 プロジェクトマネジメントの基本が面白いほど身につく本

ポイント図解 プロジェクトマネジメントの基本が面白いほど身につく本

伊藤大輔

対象:プロジェクトマネジメントに初めて携わる、PMBOKを初めて学ぶ人

PMBOKを平易な日本語と図で解説した本。そのため、プロジェクトマネジメントの従事者やPMBOK購読者にはほとんど参考になりません。これからPMBOKを学ぶ、またプロジェクトマネジメントに興味があるといった人向けの書であり、第1章~第6章に分けて、各項目毎に図を配した説明がなされています。右ページに開設、左ページに図やイラストが掲載されており、直観的に理解は進みやすいようには思います。

「プロジェクトマネジメント」実践講座

「プロジェクトマネジメント」実践講座

伊藤大輔

対象:PMBOKの基礎を学びたい人、PMBOKを少し深く学び実践に使っていきたい人

プロジェクトマネジメントの実践に役立つ知識とツールを、目標設定、計画、実行の3つの視点から解説したものです。図も多く、ケーススタディーもあるので、初心者の方には理解しやすい本になっているかと思います。目標設定のところでは、プロジェクト憲章の作成やステークホルダーの特定について、計画の部分では、可視化の重要性と、ステークホルダーの要求事項をいかに収集するか、プロジェクトの達成にはスコープ・時間・資源・コストのバランスが重要である、実行の部分では、コントロールを如何になすべきか、が書かれています。単なるPMBOKの解説よりは少し踏み込んだ形で解説されています。

プロジェクトマネジメントの基本

プロジェクトマネジメントの基本

好川哲人

対象:PMBOKの内容をある程度理解している人

PMBOKを意識しながら、独自の観点でプロジェクトマネジメントについて解説しています。プロジェクトマネジメントで使える独自のテンプレートや事例を加えて解説しているので、その趣旨は理解しやすいと思います。
ただ、概念的にとどまっていること、日本語としてあまり読みやすい文章と言えないことなど、不満な点もありますが、プロジェクト(チームで仕事をする)ということに関して、どのように進めるのがいいのかということを大枠で理解することができ、、プロジェクト(チーム)で仕事をしていると自然と意識していることも多く書かれているので、自分の業務にフィードバックすることもできるのではと思います。

PMP Exam Prep: Accelerated Learning to Pass the Project Management Professional (PMP) Exam 

PMP Exam Prep: Accelerated Learning to Pass the Project Management Professional (PMP) Exam

Rita Mulcahy

対象:PMPを目指す人、PMBOKをより深く理解したい人

基本的にはPMPの試験対策の本であるのですが、これの解説部分、またRita’s Process Chartなるものが非常に優れており、PMBOKを理解する、また実践で使っていくうえで非常に参考になる本だと思います。本ブログでも紹介、また参考にしている部分のあります。英語で600ページにものぼる本ですが、興味のある方は是非とも学んでいただければと思います。

再エネ事業
再エネにおける プロジェクトマネジメント再エネプロジェクトにおいて、どのように プロジェクトマネジメント を適用するのかを概説。この記事では、プロマネ業務といえる統合管理について説明しています。...

プロジェクト全般

世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書

世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書 ~グローバルなチャレンジを成功させるOSの作り方

佐藤知一

対象:プロジェクトマネジャー、プロジェクトマネジャーを目指す人

プロジェクトマネジメントをストーリーだてて紹介した本。ストーリーとしては製品開発プロジェクトを主題としていますが、再エネ開発に携わる人でも理解しやすい内容となっています。
PMBOKをもとに、ストーリーは展開していき、「知識だけではなく、OS(考え方や仕組み)が必要」として、その仕組みがない場合、どのように構築し、実践につなげていくべきかが語られています。フレームワークも比較的多くしめされており、実際のプロジェクトを進める際の教科書としても使えるかと思います。加えて、著者が元日揮において海外プロジェクトを管理していた立場の方であり、そのため、教科書的なPM技法だけではなく、自らの経験に基づいた考え、課題に対する解決方法などが示されています。

外資系コンサルタントが教えるプロジェクトマネジメント

外資系コンサルタントが教えるプロジェクトマネジメント

山口周

対象:プロジェクトマネジャー、プロジェクトマネジャーを目指す人

ある程度、PMBOKの基本的な概念には沿っていますが、プロジェクトマネジメントの個々の手法ではなく、プロジェクトを成功させるには、どういったことが必要であるかを、著者の経験をもとに記載されているものです。
そういった意味では過去にプロジェクトマネジメントに従事した経験のある人向けであり、改めてプロジェクトを成功するためには何が必要かを整理するには良書かと思います。
成功するプロジェクトは「目的を持たないプロジェクトが成功することは絶対にない」「チームメンバーは厳選せよ」「リソースには十分余裕を持って臨め」など、勝てるプロジェクトを見極め、自分の身をそこに置くのはプロジェクトリーダーとして成功するために重要なポイントとしています。
特に、プロジェクトの初期段階におけるプロジェクトマネジャーの役割の重要性、プロジェクトの目的をメンバーに浸透させる、メンバーの時間への配慮を行う、オーナーの期待値を上げないようにするなどをしていきしています。

工程管理

クリティカルチェーン なぜ、プロジェクトは予定通り進まないのか?

クリティカルチェーン なぜ、プロジェクトは予定通り進まないのか?

エリヤフ・ゴールドラット

対象:プロジェクトマネジャー、プロジェクトマネジャーを目指す人

本書は、エリヤフ・ゴールドラット博士のTOC理論(制約理論)をベースとしたプロジェクトマネジメント方法を述べた書籍です。小説の舞台は、ある大学の社会人向けMBAコース。所属会社から「製品開発プロジェクトの期間を短縮する方策を探れ」との指令を受けた3人が、プロジェクトマネジメントの講義を通して、課題解決のヒントを見つけるまでを描くものです。
まずTheory Of Constraint(TOC、制約理論)とは何かですが、クリティカルパス(プロジェクトの中で、従属ステップが一番長く、時間が一番長くかかる活動)を把握し、そこを管理していくが、そのためには、クリティカルパス上で最も能力が低い箇所(制約条件)に全てを従属させるべしというものです。
そうした観点から、なぜ遅れは発生するのかを説明していますが、主には以下の通りとなっています。
・学生症候群。ぎりぎり最後になるまで作業に取り掛からない。
・各活動において遅れると個人の評価に響くために、それぞれが余裕時間の積み増しを行う。
・浮いた時間は無駄に消費される。
・先行作業の遅れが蓄積しがち。
・作業掛け持ち、結果として複数を均等にやろうとすることによる作業時間のロスが生じる。
具体的な対応方法として、5つのステップを上げています。
1. Identify the system’s constraint(s)、システムの制約を見つける
2. Decide how to exploit the system’s constraint(s)、システムの制約を徹底活用する方法を決める
3. Subordinate everything else to the above decisions、制約にその他すべてを従属させる
4. Evaluate the system’s constraint(s)、システムの制約の能力を高める
5. Warning. Do not allow Inertia to become the system’s constraint. When a constraint is broken, return to Step 1、警告。惰性がシステムの制約にならないようにすること。この制約が制約でなくなったら、ステップ1に戻る。
このように、一般的なWBSを引いて、個々のタスクに期限設定をして、作業を消化するという考え方とは異なるため、組織のカルチャーが変わる必要がありますが、まとめてバッファーを用意しておくき、スループットを最大化するという考え方は非常に役立ちます。

TOCに関する下記の記事もご参考ください。

Theory of Constraints (TOC)によるプロジェクトマネジメント TOCとは、制約に注目して問題解決を行えば、小さな変化と小さな努力によって、短時間のうちに、著しい成果が得られるという理論 TOC...

コミュニケーション管理

交渉

ハーバード流交渉術

ハーバード流交渉術

ロジャー フィッシャー (著), ウィリアム ユーリー (著), 金山 宣夫 (翻訳), 浅井 和子 (翻訳)

対象:すべての人

「駆け引き型」交渉術ではない、「原則立脚型」交渉術について、その考え方と豊富な事例により説明しています。単純な勝ち負けではなく、自分も得をしつつ交渉相手も納得して良好な関係が継続できる交渉法であり、対立ではなく、双方でパイを広げていけるように、双方の利益に注目して交渉していくというものです。
ハーバード大学ロースクール教授であり、交渉学研究所所長でもある著者が、司法省・国防省で国家レベルの交渉に携わった経験から交渉を成功させる方法を指南した書です。
解決案は自分のアイデアによるものだと感じられてる場合は合意の成立は容易になり、当事者が承認したために、その案が強固なものになると述べています。
また自分の主張する立場と相手とを結ぶ直線上に全て答えがあると思いがちであるものの、その場合は①早まった判断をする②単一の答えを探そうとする③分合うパイの大さを一定と決てかかる④相手の問題は相手が解決ればいいとなると警笛を鳴らしています。
そこで選択肢を考出す行為と評価を下す行為を分離して幅広い選択肢を提示することで解決が図りやすくなるとしています。また相手の立場に自分自身をしっかり置いてみることで、新たな視点が生まれるともしています。
上述した基本的な考え方をもとに、相手によってどのように対応していくかについて、事例をもとに説明しています。

ハーバード流“NO”と言わせない交渉術 単行本(ソフトカバー)

ハーバード流“NO”と言わせない交渉術 単行本(ソフトカバー)

ウィリアム・ユーリー (著), 斎藤 精一郎 (翻訳)

対象:ハーバード流交渉術を読み、理解した人

著者は「ハーバード流交渉術」と同じで、本書はその実践・応用編。 ハーバード流交渉術(いわゆる「原則立脚型」)は、それぞれの立場から言い分を通すだけでなく、お互いの主張の「利点」に焦点を当て、できるだけ共通の利益をみつけていこうというもの。
本書は”実践””応用”編であるため、具体的な事例をもとに書かれており、最初に交渉でまず大切なこととして相手の戦術を分析するとしています。相手がとる戦術として:
・妨害的戦術:交渉の進行を妨害することで交渉を有利に運ぼうとする戦術、「なにしろ我が社の方針なのですから」と立場は変えられないと主張する相手。
・攻撃的戦術:「私たちの要求をのまないと大きな損害になる」と恐喝まがいな相手。
・欺瞞的戦術:でたらめなデータを使い、自分の立場を通そうとする相手。
次に、その分析に基づいた効果的な対応術が示されています。ポイントとしては、「イエス」か「ノー」では答えられない質問で交渉していくということになります。
本書で貫かれている主張は、交渉とは決して勝ち負けを競うものではなく「相互満足」を目指すものであるということです。
他にも多数、交渉に関する図書はありますが、結局、上記2冊をベースとしているものが多く、まずはこれらの図書をよく学び、実践で使っていく、そのうえで、対応できない相手にどのように交渉していくべきかと考えるのがよいと思います。

リーダーシップ

人を動かす

人を動かす

D・カーネギー (著), 山口 博 (翻訳)

対象:すべての人

言わずとしれた古典の名著。著者は1888年生まれ。原書は1936年に初版が発行され、1981年の改訂版が出るまでに、世界各国語による訳書を含めると一年平均30万部以上が売りたといいます。本書は、85年前に書かれた内容を40年前に現代版に改訂されたものになります。
人を動かすとき、ついつい自分の望むことを一生懸命に伝えようとしてしまいますが、それでは相手は動いてはくれません。人は誰しも承認欲求をもっており、相手の立場に立ち、相手の話を聞き、相手の良いところを見つける。そうすれば必ず相手は心を開き、人間関係もうまくいくというのが基本原則論になります。
この本で紹介されているようなことをすべて実践できる人間はいないでしょうが、多くの人と素早く良好な人間関係を築くことがプロジェクトを進めるうえでも重要であることから、ここで書かれていることを実践しようと心がけることは、プロジェクトを成功に導くためにも有効と言えると思います。
本書に書かれている通り、人と良好な関係を結ぶことに悩んだいれば、本書を読むことで、人間関係の悩みを、自分事として捉え、これから人間関係を改善していくことに希望を持てると思います。

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたった一つのこと

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたった一つのこと

マーカス・バッキンガム

対象:すべての人

プロジェクトマネジメントに関わらず、どの場面でも必要になるリーダー及びマネジャーの資質に関して述べています。
リーダー、マネジャーとで求められるスキルは異なります。その点を具体的な事例などで説明した本。リーダー、マネジャーに加えて、継続的に成功する人々(個人)について、それぞれ、唯一考えるべきことをあげたら何かを述べ、それに関連する事項について解説しています。
まずリーダー何よりも「明確さ」を示すこと。ある程度の反論は承知の上で、未来を描き、部下たちの共通する不安を払拭するのが重要と述べています。
一方のマネジャーは、部下一人ひとりに注目すること。一人一人の部下の個性を尊重し、拡大・強調させた上で活用していく。マネジャーとして、自分の思い描く理想の枠に部下を当てはめるのでは無く、部下の特性に応じて柔軟に組織をも変えていけば良く、そのために、考える時間の確保、称賛すべき業績を上げた従業員を選ぶ、日々練習を行う箏を意識すべしと述べています。また、プロジェクトを成功に導くために、どの業務が弱みを出さないかを知り、拒む強さを持つべきとも。
両者に共通する決定的なスキルはバランスを取る事ではなく、敢えて「アンバランス」を目指すこと。
最後に成功を継続する個人は、何をしないかに注目すること。成功すると新たに生じる障害、退屈な役割やストレス、消耗する機会が生じるので、自分がやりたくないことに気が付いたらできるだけ早くそれを切り離すことが大事と主張しています。

リスク管理

Geotechnical Baseline Reports for Construction: Suggested Guidelines

Geotechnical Baseline Reports for Construction: Suggested Guidelines

Randall J. Essex

対象:建設契約(特に土木工事)に関わる人

再エネ開発において、自然条件というのは、建設時にコストや工期に大きな影響を与えるリスクといえます。特に、その土地の地形・地質・エネルギー特性を使って開発するため、地質がプロジェクトを与える影響は非常に大きいです。
地質リスクを特定するためには、計画段階から系統的に地質調査を行う必要があります。予備調査段階では、広い範囲の概略調査を行い、建設段階では狭い範囲の詳細調査を行い、望ましくない地質条件を見逃さないようにすることが重要となります。
地質調査が増えれば、調査精度も上がり、リスク低減につながりますが、風力であれば、海のボーリングは非常に高額であり、ダムにおいても長い岩盤へのボーリング調査は同様です。ただ、地層の形成特性によっては、ある程度、見えない部分の推定も可能である一方、褶曲などの造山活動があるとろこでは、何本ボーリングを掘っても特定するのは難しい地点もあります。結局、この地質リスクの算定こそが、開発者やエンジニアの能力によって大きく左右される点と言えます。
本件のリスク分担が非常に難しく、FIDICのSilver Bookでは、このリスクはコントラクターがもつため、リスクプレミアが非常に高くなります。よって、通常の水力や風力など、地質リスクの影響が大きい分野では、開発者側がリスクをとることも多く、その基準を建設契約締結前に取り決め、契約を結ぶ事例があります。その地質基準を記載したものをGeotechnical Baseline Reportとして、契約書に取り込まれています。こうした地質リスクをどのように契約書に落とし込むべきかを解説した本となります。
かなり、特殊な本ですが、建設契約、特に土木工事に関わる人には読んでおいていただきたい本と言えます。

調達管理

建設管理

日本では建設管理というのはマイナーな分野でもあるので、あまり良書はなく、このブログにおいて、過去の業務経験や論文などに関する話題を取り上げています。それでも、いくつか参考になる図書もありますので、ここで紹介いたします。

Construction Contracts Law and management(日本語:建設契約 法とマネジメント)

Construction Contracts Law and management

Will Hughes (著), Ronan Champion (著), John Murdoch (著)

対象:建設契約に携わる実務者

建設契約 法とマネジメント

ジョン マードック (著), ウィル ヒューズ (著), 大本 俊彦 (翻訳), 前田 泰芳 (翻訳), & 1 その他

対象:同上

この本は、建設契約にまつわる教科書的な本であり、系統だてて一通り、建設契約に関する必要事項を学ぶことができます。この本には、日本語版もあり、大成建設で海外プロジェクトに携わり、その後、京都大学の教授をされていました大本俊彦先生が翻訳されています。大本先生は日本では珍しい仲裁士の資格も持っていらっしゃいます。
ただ、再エネ開発において、プロジェクトファイナンスを使って資金調達するようなプロジェクト(グローバル企業も参画するプロジェクト)は英語による契約が基本であることから、英語版の購読をおすすめします。

英文EPC契約の実務

英文EPC契約の実務

本郷貴裕 (著)

対象:建設契約に携わる実務者

EPC契約に関する解説本。著者は別に本郷塾というウエブサイトを開設して英文契約書のイロハと複雑なEPC契約について契約書分析を啓発もされています。当ブログはどちらかというと土木工事より、こちらはプラント建設よりで、FIDICでいうところのYellow Book(もしくはSilver Book)に沿った解説が多くなっています。EPC契約を学ぶにあたっては、FIDICを紐解くというのが実務上の定石ですが、当ブログと同様に、それを省いて学べる数少ない図書だと思います。本書の特徴としては、実務的なオンザジョブトレーニングで学ぶノウハウというものを言語化した本という印象で(というのも著者は元東芝のプラント契約で実務をされており、それに基づいた事例が多数載っています)、実務から入った人には頷く点も多いです。ただ、当ブログで書いている再エネ独自の自然相手の部分はないので、そのあたりは、当ブログを参考いただければと思います。

国際 建設契約で代表的な FIDIC 標準約款 とは?各契約形態ごとの FIDIC 契約約款 に関する概説を行うとともに、 再エネ プロジェクトにおいて、契約形態 の選択がいかに重要であることを説明しています。...

その他

失敗から学ぶ

プロジェクトは失敗が付きものであり、そうした事象が起こった場合どうすべきか、今後、そうしたことにどのように備えていくべきかということが重要になってきます。そうした観点から参考になる本を紹介します。

失敗の本質

失敗の本質

戸部 良一 (著), 寺本 義也 (著), 鎌田 伸一 (著), 杉之尾 孝生 (著), 村井 友秀 (著), 野中 郁次郎 (著)

対象:すべての人

失敗に関する名著。戦争での実例を通して失敗の本質を導き出すという趣旨で作成されています。目標の達成や到達のために必要な思考と戦略に即した名言の宝庫で、冷静な分析が行われています。そしてそこから導きだされる結論として、如何に人間が同じことを繰り返すかということを問うています。その中でも、プロジェクトマネジメントする中で、
・テンプレートと物事の本質は明確に区分されるべき。
・「知らない」「考えない」は失敗の理由にならない。
・成功の条件が間違っていればどれほど努力しても成功しない。
・組織外人材取り組みで流動性確保,タスクフォースのような特定目標への枠外連携の高速化を成立させた米軍(アジャイル手法)とできなかった日本軍とが結果に大きく影響があった。
・部分最適による戦訓共有化を失敗してしまう。
など、現在の組織、プロジェクトのマネジメントにも通じる事例が多数乗っています。戦争背景がわからないと、理解しづらい部分もあるものの、熟読して理解、それを業務に生かすことは非常に有用と言えます。

終わりに

上記に挙げた本以外にも、参考になる本などもあるのですが、おいおい、更新して皆様に紹介していきたいと思っています。

また「この本、とても参考になるよ!」というものがありましたら、ツイッターや質問欄にて共有いただけますと、うれしいです。

ABOUT ME
Paddyfield
土木技術者として、20年以上国内外において、再エネ 事業に携わる。プロジェクトファイナンス 全般に関与、事業可能性調査 などで プロジェクトマネージャー として従事。 疑問や質問があれば、問い合わせフォームで連絡ください。共通の答えが必要な場合は、ブログ記事で取り上げたいと思います。 ブログを構築中につき、適宜、文章の見直し、リンクの更新等を行い、最終的には、皆さんの業務に役立つデータベースを構築していきます。 技術士(建設:土質基礎・河川、総合監理)、土木一級施工管理技士、PMP、簿記、英検1級など